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雲骸

「うん、うん、明日、顔見せに行くから」
「……」
「じゃあ、切るね」
「雲雀くん…?」
「ああ、母親だよ」
「……」
「骸?」
「いえ、」

雲雀くんにもご両親がいたんですね。当たり前だろう。でなきゃ僕はどうやって生まれたって言うんだ。
骸が哀しげな顔をしたのはきっと、親の愛を知らないからだ。だって骸にはいないんだもの。そんなの。
捨てられたんだね、可哀想に。憎んでいるんだね、可哀想に。
可哀想な骸、親を大切にしている僕をどう思っただろう。
僕には分からない、肉親に殺意を向ける骸の気持ちが。分かってあげられない。分からないよ、骸。どうして殺してしまったの?僕は君を生んでくれたご両親に感謝しているよ。君にこうして会えたのも一緒にいられるのも、生を与えてくれた親のおかげなんだから。その親に死を与えるなんて、とんだ薄情者だよ。何故殺しておいて君はのうのうと生きているんだい?ああそうか、君を咎める者すら、何処にもいないからだ。愛してくれる人も、叱ってくれる人も、
可哀想に。
肉親さえ愛することも出来ないなんて、可哀想に。

「僕だけを愛してくれない君が、憎くてたまらないですよ」

僕は、君という存在を造り出した無情な運命を憎むよ。

君を愛してあげられるのは、この世界に僕1人だけ。




雲雀が意外と両親を大事に想ってたらいいな

不幸な不孝者に死罪を

雲骸

「常識でものを考えて下さい」
「常識?」

不機嫌になっていく彼に、しまったと思った。我が道を貫くような人だ、常識など通用するわけもなく、善悪すら己のさじ加減で決めてしまう。数多の罪を犯してきた僕の言えたことでは無いが、彼とはあまりに境遇が違うのだ。比べることそのものが間違っている。
それでも、やはり普通が通らない相手。咄嗟に出た自分の言葉を悔やむ他無かった。

「悪いけど、僕の中では常識だよ」

ああやっぱり。
青ざめる僕が面白いのか、しかめ面は俄に変わって口の端を吊り上げ笑みを浮かべる。
余計なことを、言ったものだ。
自分の中で常識であれば、それでいいらしい。大多数の人間と食い違っていようと、僕が反論しようと、彼に言わせれば間違っているのはこちらなのだ。

「君は僕のものだって、知らしめてやらないとね」
「心配しなくても僕を好きだなんて奇特な人間、君だけですよ」
「そんなの分からないよ」
「そもそも皆さん引いてたじゃないですかっ」

再燃する怒り。非常識な彼の愚行。それは少し前の出来事だった。ボスを含め守護者が揃った会議の中、仕事で1人遅れた彼が何を思ったか、突然僕を抱き締めてきた。周知の知らぬ仲とは言えその場にいた全員が唖然としたのは言うまでもなく、何より一番驚愕したのは僕。久しぶりに目に入れた恋人の姿に嬉しくはなったが、人前でそれを晒せるほどの神経は持ち合わせていない。後ろめたいのではなく、恥ずかしいからだ。
だからこそ、場所は弁えろと口煩く言ってきたのに。長い時間離れていたのが悪かったようで、周りなどまるで見えていない彼に、僕の必死の抵抗など全く意味を成さなかった。
当然会議は中断。どちらかと言えば僕も被害者の1人であったが、恋人である以上僕の所為でもある。申し訳ありませんと不本意ながらも謝罪してその場から彼を引きずり退散した。それが数分前。

「寂しかったんだよ?」
「それは僕も、同意見ですが…だからって」
「恥ずかしい?」

ニヤニヤと笑う彼はきっと確信犯。ああ質が悪い。もう知りませんと背を向ければ後ろから抱き締めてくれる。僕もきっと確信犯。
とっくに越された身長の所為で、彼の声はダイレクトに伝わる。ごめんね、なんて言いながら耳を噛んでくる。悔しいけれど骨抜きだ。2人きりならば、こんな甘過ぎて反吐が出そうなスキンシップだって嬉しくてたまらない。悔しいけれど。彼が触れてくれることが嬉しい。彼に触れられることが嬉しい。彼と僕の体温が混ざり合って溶けていく。溶けるようなキスをする。キスが合図となって堕ちていく。狡い狡い狡い。こうなったらもう彼の思惑通りなんだ。

「…許して、あげますよ」
「そう、じゃ、寝室行こうか」
「君って人は…」




10年後の雲雀は更に我が儘で骸を困らせてるといいな

カッとなって書いた阿→三、後悔はしていなi

浜田って言ったっけ?最近良く出入りするようになった。援団作ってくれんのは正直ありがたいし、球拾いとか三塁走者やってくれたりとか、それなりに練習の役には立ってるから、邪険にするつもりはない。
気に入らないのは三橋だ。いや、三橋自体が気に入らないわけじゃない。幼少時代の野球仲間だかなんだか知らないが、三橋は浜田を随分慕っている。もちろん、いい兄貴分的な意味で。浜田もそんな三橋が可愛いのか、一緒にいることが多い気がする。2人仲良く思い出話でもしているんだろうか。
俺に対しては殆んどびくついた態度取るくせに、やけに楽しそうじゃねぇか。マジ腹が立つ。
これは、嫉妬なのか。三橋相手にやきもきしてる自分が嫌になるぜ。苛つく理由なんか、捕手は投手に気を使うからってだけで十分なのに。それも、特別扱い難い投手だから普通より何倍も気ぃ使わなきゃなんねぇ。
バッテリーとか関係なく三橋に苛々して、なんつうか、余計なストレス感じてんだよ。そりゃ練習の間は独占してられっけど、逆に言えば野球を通じてしかこいつに関わることが出来ないってことで、クラスも違う俺なんか、捕手やってなきゃそんなに話すことも無ぇんだ。
悔しいが、三橋が野球やってるのは浜田の存在がでかい。野球の楽しさを教えたのは間違いなく浜田だ。俺が三橋と知り合うことも無かった。その点は感謝してる。でもやっぱり悔しい。三橋と会えたのもバッテリー組めたのも浜田のお陰ってんじゃ、俺はこいつに頭が上がらねぇってことじゃねぇか。
いや待てよ、ここまでお膳立てしてくれてんだからこの先はどうだ?もし浜田が恋のキューピッドなら……いやいや、なんだよキューピッドって。気持ち悪ぃだろ。
あ?恋敵?まさか、浜田は泉に惚れてっからな。泉はどう思ってるか知んねぇけど。
分かってても、ムカつくもんはムカつくんだ。しょうがねぇだろ。
とにかく、だ、俺のことも応援してくれよな、団長さん。




ひたすら阿部が電波ってるだけだこれ

雲骸

とても人が作ったとは思いがたいお弁当?らしきものを笑顔で差し出される。
なんでいるの?とか、他校生が良く堂々と入ってこれたね、とか、そんな疑問が全部吹っ飛んだ。

「雲雀くんの為に頑張って作ったんですよ」

さぁ食べて下さい!
ずいと得体の知れない中身を見せつけるように弁当箱を近付けてくる。
骸は確か料理は出来たはずだ。これは一体、なんの嫌がらせ?なにか怒らせるようなことしたかなと、終始保たれている笑顔の裏を探ろうと試みた。
けれど怒っているわけでもなさそうだった。ただその笑顔は相も変わらず胡散臭い。

「骸、これ、味見したの?」
「何故です?」
「ていうか料理と言えるのこれ」
「僕、日本食は苦手なもので…」

しゅんとする骸に、そういえば和食を作っていた覚えがないと思い出す。苦手なくせに和食好きな僕の為に作ってくれたんだね。うんでも、出来ればその心遣いは他でお願いしたかったかな。

「食べてくれないのですか?」
「お腹空いてないから」
「…せっかく作ったのに」

罪悪感が無いわけじゃない。でもごめん、僕まだ死にたくないんだ。
ふと弁当箱を持つ手を目にした。良く見れば指のあちこちに絆創膏が貼られている。綺麗な指が台無しだ。慣れない日本食に四苦八苦したんだろうか。胸の奥がギュッと締め付けられる思いがした。
ああもう、仕方ないな。

「分かったよ。食べるから、お茶淹れてよ」
「雲雀くん…!はい!すぐ淹れてきますね!」

前の僕なら、殴り殺してるところだよ。ほんと、愛の力って恐ろ…素晴らしいね。

骸の作ったお弁当は、壮絶に不味かった。




「骸さん、どうれした?」
「ちゃんと食べてくれましたよ」
「あれを食べるなんて…侮れないな、雲雀恭弥」
「クフフ、男とはなんと愚かな生き物でしょうか。絆創膏を貼ったくらいで」
「骸さんが包丁如きで怪我するわけ無ぇっての」
「これだから雲雀くん苛めはやめられません」
(随分と、歪んだ愛ですね骸様…)




日本食じゃなくても包丁は使うよなって話だ

骸綱

後ろから抱きすくめて彼の香りを楽しんだ。石鹸の匂いだとは思うけれど、それだけでは無い気がする。
彼のそんな子供っぽい匂いが好き。それなのに君ときたら!

「骸っていい匂いがするよな」
「そうですか?香水をたしなみ程度に着けてはいますが」
「高いんだろうなぁ」
「ええまぁ」
「ムカつくー」

誤算だった。これでは彼の匂いが香水に負けて消えてしまう。しかし腕をほどく気なんて更々無い。でも離さなければ匂いが移ってしまう。なんて矛盾。

「なぁ、その香水、ちょっと分けてくれない?」
「…?欲しいのでしたら新しく買って差し上げますよ」
「いいよ!高いんだろ勿体ない」

貧乏性にケチつける前に、香水なんてものに興味があるのかと疑問に思う。
彼から同じ匂いがする瞬間を思い浮かべると酷く気恥ずかしかったので、怪訝な声色で君には似合わないと言ってやった。もちろん、そんなこと思ってはいないが、似合う似合わない以前の問題だ。
僕は今のままの君が好きなんですよ綱吉くん。

「似合わなくて悪かったな。それに俺が着けるわけじゃないし」
「なら何の為に」
「…ベッドに入ったらさ、お前の匂いがしたらいいなぁと思って」
「ベッドですか?」
「お前に、抱き締められてる気分にならないかな…って何言ってんだ俺!!」

ポカンとする僕を置いてきぼりにして1人ギャーギャー喚く君。ほんと、何言ってんですか。よくもそんな、恥ずかしいことを。

「いっそ添い寝した方が早いんじゃないですか?」
「それはダメ!!恥ずかしいから!!」
「君の先程の台詞がどれだけ恥ずかしいか分かって言ってます?」
「ああもう言うなって!」

僕は君の子供っぽい匂いが好きなのに、それなのに君ときたら!

(そんな可愛いことを言われたら、同じ匂いを纏う君も悪くはないと思ってしまうじゃないですか!)
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