新しい環境に浮かれるようなざわめきは今はもうない。
静寂が体育館を包み込み、私もその中にポツンと居座っていた。


入学式とか卒業式とか式典ってなんでこんなにめんどうなんだろう?
体育館の床が汚れないように敷かれたシートも、新入生が歩くための赤いやつも、舞台上に置かれた花瓶もなにもかもがどうでもいい。

校長の長いが必要性を全く感じない祝いの言葉を聞く気にもなれずあくびをかみ殺す。三つ隣の席には奈緒の姿がある。眠気と戦っているのか、カクンカクンと揺れたと思えば頭を振って姿勢を正す。それを繰り返していた。素直に寝りゃいいもんを。まあ、そういうわけにはいかないのが奈緒なのだが。

それにしたって早く終わらないかな、このくだらない式典。私にとっては入学したっていう事実さえあればいい。恋人にしたってそうだ。付き合っている事実があればそれでいいのだ。
今まで付き合ってきた男は何人もいるが、自分から告白したことは一回もないし、相手を好きになったことはない。正直な話、私の外見だけで告白してくる奴がほとんどだった。それはしょうがない話で、自分で言うのもなんだが、見てくれは相当いいから。
どの人も私のことをちゃんと愛でてくれた。本当の私を見てほしいとか、愛してほしいとか思わない、ただ、淋しいときに埋めてくれる存在が欲しかった。それは今も変わらない。
奈緒のことは確かに好きだし、一緒にいると楽しいし、癒される。それに、男をとっかえひっかえしている私は当然女受けが悪い。中学に入るまでは友達という友達もいなかった。いたのは、私の彼氏を伝手にして男を手に入れようとする私と同じくらい浅ましい女子くらい。けれど、彼女たちの気持ちが分からないわけでもない。
淋しさにも種類があるのだ。奈緒がいれば癒される淋しさと、男がいれば薄れる淋しさと、それらは同じじゃないのだ。
まあ、体裁的に男欲しいやつの気持ちは分かりたくないけど。

男も奈緒も利用しながら生きている私はひどい奴だろうか?
ひどいというやつはきっとたくさんいるだろう。でも誰だって私と似たり寄ったりに生きている。と、思えのは私ばかりか?


「新入生起立」

ようやく校長の話が終ったらしく、教師の声にハッとした。澄まして立ち上がると、威嚇からがたっと音がした。そっちを見れば奈緒が俯きながら立ち上がったのが見えた。寝てたな、あのアホ。

「礼」

その一言に新入生全員がお辞儀をする。
自分の体温ですこし温まったパイプ椅子に座りなおし、息をつく。


入学式は心底どうでもいいが、これからの高校生活は結構楽しみだ。
奈緒もいるし、今回の男は長続きしそうだし。


これからの生活を心に描きながら、目立たないように椅子に体重をかけなおした。

座っているパイプ椅子が小さく軋んだ。





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沙織さんはある種悟ってる人、自分という人間をよく理解してる。


まあ、何が書きたかったっていうと、自分でもわからん
きっとわけわからんのが書きたかったんだ。



次は何しようかな