注意!
シズ→→→←イザ
仄かに総受け
臨也さん偽物警報


















薄れゆく愛は闇色(中)




折原臨也は分からなかった。
自分の記憶が正しければ池袋ではなく新宿にいたはずだ。否、それは些細な事かな。
ただ臨也は走っていた。

何故か後ろで走る平和島静雄の怒りを買っているらしい現状に困惑しながらも捕まれば命が終わる気がしていた。


「なーんで追って来るのかなー、シズちゃんは―」

「手前がさっき絡んできたからだろうがぁぁぁ」


「は、いや俺知らないしっ!もう新宿帰るから見逃してよ」

「誰がこんな絶好の機会逃すかよぉ」

「シズちゃん、顔、犯罪顔になってるからっ」

「元々こんな顔だっ、ノミ蟲野郎ぉぉぉ」





自分の記憶の欠落とかもうどうでも良いから誰かシズチャンから助けてくれ。
曲がった先にいたのは見慣れた来良の制服の姿だった。
俺が今一番の気に入った火種の一つ。


「やあ、帝人君。今日も充実した毎日を送ってるかい?」

「臨也さん…」

「今日は紀田君と一緒じゃないんだね」

「ハイ、正臣は今別行動で…」

「……おーい、帝人―。今平和島静雄が…ゲ」


臨也が出会ったのは竜ヶ峰帝人と紀田正臣。
帝人は瞳を輝かせている気がするのは気の所為かと臨也は顔を幽かに引きつかせる。
帝人の背後より遅れてやってきた正臣の心底嫌そうな声に臨也は本来の調子を取り戻し口元に笑みを浮かべ、親しげに手を振る。
そんな臨也を見て帝人は軽く臨也の服を引いた。





「やあ、紀田君素直な反応有難う」

「正臣…良い処に邪魔しに来たの?」

「み、帝人っ!?」

「済みません臨也さん、正臣が空気読めなくて…」

「ああ、彼大抵空気読めないもんね」

「そうなんです、だから折角臨也さんと話してるのを邪魔しに来て…」

「ん?」

「あ、御茶飲みに行きましょう。もっとゆっくり話しましょう」

「帝人、そ、それはナン」

「正臣うざい」

「………可笑しいな。帝人君はそんな性格だったっけ」

「ちょっと正臣にイラッと来ただけですから」

「俺のせいなの」

「うん」

「酷い…」

「……あー、とりあえず俺は此処で…」

「え?もう行くンすか」

「おや正臣君。君が引き止めてくれるのがとっても嬉しいんだけど君の話じゃシズちゃんがこの辺にいるんだろ?なら俺逃げなきゃ」

「平和島静雄なら…」

「あ」



会話は臨也の短い一言共に打ちきれた。
空気を裂くような音共に地面に看板がめり込んでいた。
三人とも言葉を失い、一番早くに動いたのは臨也だった。二人に背中を向けて走り出す。


「じゃ、まったねー」



颯爽と走り去る背中を見送りながら帝人は看板の飛来する方向を見た。
明らかに苛立った静雄が其処い居た。


猛スピードで走っている。
臨也を追っていたのは明白だった。帝人が瞬きすると同時に目の前を通りずぎる姿は陸上選手とは比較にならない様な速さであった。
しかし、帝人は其れについて驚愕はない。ただ、振り返った一瞬に静雄の目に確かにあったのはほの暗い妬む様なものと帝人は知っている、
臨也は知らない。



「あの二人ってさ―…」

「なんだよ?」

「なんであんなに素直じゃないんだろう」

「お前そんな趣味が…」

「正臣だってそうな癖に」




二人が去った背中を見ながら語った言葉を聞いてはいない。
知らぬが花、なのかもしれない。
臨也はパルクールを使い、ビルを昇っていた。窓の桟を伝い、着実に高度を上げビルからビルへと飛び移る。猫のような身のこなしで飛び移る姿に静雄は一度目を細めるも自分も腕力と身体能力を駆使して上へと上って行く。
時に壁に拳をめり込ませて取っ手を作り、時に爪先をコンクリートに穴を開け足場を作った。

臨也との距離を着実に詰めていく。途中、トラックに跳ねられそうになったりと臨也の画策した悪事が静雄の足を止め、苛立ちに力を増幅した.
増幅した苛立ちが更なる力を呼び起こし、破壊衝動が増していく。自分の中で手加減が次第に躊躇がなくなっていく。


「いーざーやぁぁぁぁ」

「シズちゃん諦めてくれる気になった―っ?」

「良いから止まりやがれぇぇぇぇ!」

「アハハ、ないよねー」

「死ね、殺す、死ね」

「こわぁぁい」



軽口を言っているも臨也はそろそろ限界に近かった。今まではトラックに跳ねられたり、他のものに喧嘩を売られれば直ぐに意識が其方に集中する。その時に距離を稼ぎ逃げれば良い。
何時もと同じ段取りだったはずなのに縮む距離に次第に臨也は自分にも苛立ちが溢れていた。だから、逃げるのを止めた。

廃墟の屋上で。
来るだろう金髪を待っていた。




時間が経過する。
短時間な筈なのに永劫な程長い時間とも感じる。


思考も巡らせる事もなく、ただ夜空を眺め声が響く。


……――なんで、シズちゃんを待つんだい
……―――なんで、化け物なんかと話すんだい。
……―――なんで、人間なんかと話すんだい。




「…うるさいな」



…良いじゃないか、皿にはもっと沢山の火種が並んでるよ。
良いじゃないか、火種なんてもっとたくさん起こせるよ。



「うるさい」

「何がうるさいだ」

「…………シズちゃん」

「手前がうるせーんだよ」




いっつもタイミングが悪いんだよね、シズちゃんってさ。






今は頭の中の声に同意したかった。











―――――
話が進まない!(;一_一)