薄れゆく愛は闇色(後1/2)








注意
シズ→→→←イザ
臨也さんいっぱい
臨也さん偽物警報
シズちゃん偽物注意報


以上が許せる方のみどうぞ















頭の中の声に同意した途端に、俺は頭痛に襲われた。同時に抗いがたい睡魔にも。
目の前に天敵がいるにも関わらず片手を額に当てた。


遠くで聞こえる声は何故か切羽詰まった声がした。
同時に視界に埋める金髪は臨也よりも切羽詰まった顔に他人事のように折原臨也は笑って意識を手放した。









「あーあ、シズちゃんってば本当にタイミングってのが読めてないんですからー」





崩れる様な身体を静雄が支えるよりも早く意識を失った筈の臨也から声が聞こえた。
普段喋るものよりも幾らか高い声。
まるで女の様な喋り方。


普段とは異なるものに静雄は眉間に皺を寄せた。
臨也は倒れる事無く堂々と静雄と対峙をする。倒れる身体を支えようと差し出した手は行く場を失い中途半端な体勢を取る。 何時もの人を小馬鹿にした笑みを携えて。其れは何時もの臨也の表情だった。しかし一つ違いがあるなら静雄に対する嫌悪の表情は無かった。
安全対策にと設置された手摺へ腰を降ろす。
既に老朽化が進んだ其れは体重を掛ければ壊れる危うさを持つ。しかし、臨也は気にせず腰を降ろす。

静雄は二度目の違和感に苛立ちを深くした。


「……誰だ、手前」

「だぁから、折原臨也に決まってるじゃないですかー。シズちゃんってば頭も可笑しくなったんですか?」

「俺の知ってる臨也は男だ。んな、カマみてぇな喋り方しねーんだよ」

「酷いですよー、怒っちゃいますよぷんぷんと」

「気色悪ぃ、臨也を出しやがれ」

「だーかーらー、シズちゃん頭悪い?ああ、知ってましたけどねー私が折原臨也ですよ」

「……臨也は何処だ」

「ああ、本当に嫌になりますね。そんなんだから私たちが出てきたのに」

「…あ?」

「ねえ、シズちゃん。君は化け物なんですよ、なのになんでそんな人間みたいな行動をしてるんですか?気持ち悪い。化け物は化け物らしくしてればいいんですよ、なのになんで此処に居て、なおかつ臨也君を追って来るんでしょうね。嫌いなんでしょう?憎いんでしょう?なら放っておけば良いじゃないですか。愛の反対は無関心なんですよ」




喋り続ける臨也に漸く嫌悪の色が浮かんだ。
理解できないものを見る目。
静雄は尚も黙ったままだった。
苛立ちに手摺に力を込める、足を揺らす。
耳障りな金属音が響いた。


静雄は苛立っていた、同時に混乱もしていた。
目の前の折原臨也の様で折原臨也ではない存在に。


「もう一回聴く、手前は誰だ」

「…………名前なんて大した拘りなんじゃないんだよ、シズちゃん」



一拍の沈黙に帰って来た言葉は臨也のものであるもやはり臨也のものではなかった。
先の女の口調を喋る臨也でもなく追い掛けている内の本物の臨也でもなく。今日最初で出会った臨也に似ていた。

「…手前は今日最初にあった奴だな」

「おや、分かるかい?俺達は結構似ていると思ったんだけど」

「…追い掛けていた臨也以外俺は臨也と認めねぇんだよ」

「…ねえ、甘楽も言ったけど其れはなぜ?」

「…あ?」

「言ったろ?愛の反対は無関心だ。なんで、嫌悪と執着を俺に見せる?嫌いと言いながら新宿に来る?」

「………」

「分からないよ。だから君が嫌いなんだ」



がしゃん、がしゃんと

足が鉄柵を叩く耳障りな音だけが響く。静雄は変わらず無音のままだった。


「君、会話する気がないなら帰ったら?」

「…俺が今、此処で話したいのは手前でもさっきのカマみたいなやつでもなく臨也なんだよ」

「だから、俺も臨也なんだよ」

「違う、手前は臨也じゃねぇ」

「……へーぇ、そんなこと言うんだ」

「なんだよ?」

「別に?臨也だろうがそうでなかろうが構わないんだよ。俺はね…だって、彼はもう選んだんだから」




目の前の臨也の言葉の意味が掴めず開いた口は音を発するよりも早く臨也は消えた。
消えたというのは語弊がある。目の前で突如居なくなったわけではない。
臨也は手を離しただけだった。
鉄柵から。



そして


身体を倒した。





重力に従い倒れる。






闇夜に呑まれるように。
一瞬の無重力が襲った。




「……あれ?」






静雄が一番求めた臨也の声が、鼓膜を震わせたと同時に静雄は走っていた。
思考もなく、ただ反射に近い行動で。鉄柵に手をつき落ちる臨也を見詰める。
其処にあるのは現状に理解出来ず呆然としている臨也が闇に呑まれていく様に下へと落ちていた。






臨也は廃ビルからまるで自分が自分を見ている様な錯覚とその隣で切羽詰まった表情で見る静雄に訳が分からずにいた。
ただ、その表情を見るのは今日で二度目である事を回らない思考で臨也は呑気に考えていた。




「臨也!」





身体は重力に従い落ちる。
落ちる
落ちる




背中は風を受け、夏場であっても冷気すら感じる事が出来た。
臨也はパルクールを習得している。
だから、この状況が絶体絶命とは思わなかった。



ただ、静雄の傍で自分が自分を見ている錯覚だけが行動を億劫にさせた。
夢で見る、真っ白な自分が笑いながら鉄柵に肘を乗せ頬杖をついてまるで詰まらないものを見る様に見ている。


自分の表情の自覚は無くても、それは出来た芝居を見る様な怠惰さがあった。



口を開くよりも早く、目の前に静雄が居た。








「臨也!」






静雄は決意も何もかもを吹き飛ばし、自分も廃ビルの屋上から身を投げたのだった。
何度も馬鹿の様に名前だけを呼び続ける静雄は臨也は困惑が強く、声が出ぬまま口を開くも明確な音が出る事はなかった。


ただ取られた手と抱きしめられた腕が心地良いと、ぼんやりとした頭で考えた。











もう一人の自分が、酷く不愉快そうに表情を歪めていた事を臨也は知らない。






静雄は臨也を抱き締め直し、急降下を続ける身体はめまぐるしく視界を変える。地上へとの距離が近くなると静雄も流石に焦燥が表情に浮かんだ。臨也は変わらずただ、呆然と静雄を見ていた。
細いとも取れる腰に腕をまわし視界端に捉える金属に反射的に手を伸ばし掴んだ。其れは落下防止に付けられた窓の格子だった。
二人分の重力に悲鳴を上げる金属を気にすることなく力を込める。
甲高い金属音を奏でながらも落下は止まった。




息をつく静雄と抱き締められたままの臨也が残った、





「………シズちゃん?」

「あ?」

「これは…どう言う事?」

「俺が知るかよ、好きな事言って勝手に落ちて行きやがって」

「落ちた?俺が?」

「じゃなきゃ誰が手前を落とすんだよ」

「状況的にシズちゃんかなと」

「落とすぞ手前」

「御免なさい、今だと俺骨折くらいするから」

「自業自得だ馬鹿野郎」







静雄は今、この傍にある体温に密かな幸福感を感じ、抱き締める力を強めた。
臨也は未だ分からぬと顔を顰めていた。










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後篇で終わらなかったぁぁぁぁぁ!!!!苦肉の策で1/2…終わるかな…