パンケーキ


皆城総士と話す佳ノ宮まつりの話
2023.1.21 04:52
僕の名前は皆城総士。
「はぁ……」
そして、現在進行形でため息をついているのがこの僕だ。今年で高校二年生になる僕は、去年の四月からずっとこんな調子だった。




いや、正確にはもっと前からなんだけど……まあ、それはいいとして。
「どうしたんだ?元気ないじゃん」
 アルヴィス廊下の途中でそう言って話しかけてきたのは、僕の数少ない友人の一人、『真壁一騎』。




彼とは中学時代からの親友であり、親友であると同時にライバルでもあった。
成績優秀でスポーツ万能、おまけにイケメンというハイスペック人間である彼は、去年から女子たちの間で噂になっており、ファンクラブまで存在するほどだった。
しかし、当の本人はそんなこと全く気にしていないようで、今もこうして平然と僕と会話している。



「ちょっと、コミュニケーションについて考えて居た」
「またかよ……。お前ってホントそういうの好きだよな」
呆れたように苦笑する彼だが、本当にそうなのだ。昔から人と話すことが苦手だった僕は、よく対人関係に悩まされていた。

「で、何か良い解決方法とか見つかったのか?」
「いや……解決、というか、なんというか。話をしようとすると、どうしても皆と波長が合わせづらいというか、なんというか」
「なるほど。それなら」
そこで言葉を区切った一騎は、ポケットの中から携帯電話を取り出して、電話帳を開いた。


「ちょっと、ゲストに来てもらおう」
「え」突然の提案に驚いている僕だったが、
「とりあえずやってみろって!」と言って半ば強制的になんかの約束を取り付けられた。
「大丈夫だって!なんかあったら俺も一緒に謝るからさ!」
「いったい誰にかけたんだ?」


すると一騎は、「まあまあ、もうすぐ分かるって」と言ってニヤリと笑った。
そしてその数秒後、廊下の向こう側から一人の存在がこちらに向かって歩いてくるのが見えてきた。



背丈は僕より少し低いくらいだろうか。髪の色は綺麗な亜麻色で、ちょっとだけ面影が僕に似ている。気もする。
服装は、白を基調としたワンピースの上に、同じく白いカーディガンのようなものを着ており、頭には鍔の大きな帽子を被っていた。
まるでお伽噺に出てくるような出立ちの存在は、手にバスケットを持っている。一騎は僕らの対面を見届けるとそれじゃあ! とどこかに行ってしまった。



「……これは、女性か?」
独り言、純粋な疑問が口を突いて出る。
「まつりにこれといって性別は無いよ」
その存在は、僕を見てにっこりと笑った。
そこに突如第三者の声がした。
「はじめまして、私は『遠見真矢』です。今日はよろしくね」
「ああ、はい。よろしくお願いします……」
まつりさんがぺこりとお辞儀をする。
その姿につられて、僕もついお辞儀を返してしまった。
これが僕と彼女と佳ノ宮まつりの出会いだった。
「突然の真矢ちゃん」
「いやー、総士くんって面白い人なんだねぇ〜」


場所は変わって学校の屋上。
昼食を食べ終わった僕たちは、二人でフェンスにもたれかかって座っていた。
ちなみに、先ほどの自己紹介のあとに聞いたのだが、彼女は一騎の知り合いらしい。ちょっと妹にも似ている。気もしなくもない。
不思議な雰囲気を纏っていた。

「夏々都も後で連れてくるけどいいかな。彼を一人にしておけないから」


「それは構わないけど……」
まつりさんの視線がチラリと僕の方に向けられる。
「えっと、なにか変なことでもしましたかね……」
「ふふ、君が皆城総士」
僕の名前を知っているのか。誰か島の住民から聞いたんだろうか。なんだか楽しそうに微笑んでいる。
「あの、僕のこと知っているんですか?」
「みんなが教えてくれたよ。まつりたちとは違う生き方を選んだ、もう一つの可能性の分岐点の向こう側」
「分岐……君は一体」
「それを言葉で語るのは難しい。きっと、同じ場所に居ても、君たちの道は選べなかっただろうし、条件とか、いろいろ、あるから」

不思議なことを言う。僕も、こんなことを言っているのだろうか。


「ねえ、私とも友達になってくれる? 私のことは、どうか真矢と呼んでほしいな」
真矢はそう言って手を差し出す。
まつりは彼女の手を握り返すと、「もちろん」と言った。



 それから、色々な話をした。
「へぇ、じゃあ二人は幼馴染なのかぁ」
「うん。訓練とか、同じ学校とかで、一緒なんだ」
「昔は喧嘩ばっかりしてたよね。いつも私が負けて泣いていた気がする」
「あの頃は本当に申し訳なかった。今だから言うけど、実はあれ、結構本気だったんだ」
「うわ、ひどーい」


「ねぇ皆城総士は、どうしてまつりと話をするの?」
何故にフルネームなんだろう。
誰か、そう呼べと言ったんだろうか。一騎辺りが「総士と話をしてみないか?」とか。
でも、なんだろう、なんだかそれすら些細なことにも感じられてしまう。
鏡を見るような、あるいは、未知の何かと対話するような。気を抜くと、飲み込まれてしまいそうな、変な感情だった。
あなたはそこにいますか、と聞かれているわけでもないのに。不思議な引力が働いているような気がする。
「そうだね。やっぱり、この世界の未来を見るため、ってことになるのかな。それと、もう一人の自分に会いたかった」

まつりは、そう、と言って少しだけ黙った。
「まつりは、まつりだよ。だけど、唯一の存在なんだ」

なんだか、寂しそうに。その表情は、僕にはとても悲しげに見えた。
「皆城総士がひとつになろうとした全てのようなものかもしれない」
まつりが何を言ったのかはよくわからなかったけれど、その言葉には妙な重みがあった。
それが、僕にはよくわからない。
だって僕は、僕なのだから。
「すべてが終焉したら何処かに戻って来る。けれど、それが今の形を保っているかは不明だ」
「貴方にとって全ての終わりとは、何を指すんだ?」
僕の問い掛けに佳ノ宮まつりはただ微笑んだ。
「君が今考えて居ること」

遠くの景色を見つめながら、ぽつりと言うのだった。
まるで、自分に言い聞かせるように。
まるで、祈りのように。
まるで、懺悔のように。
まるで、後悔するように。
まるで、希望を求めるように。
「けど、それは、地球が生きているから。だから、始まりも終わりも感情の中にしか存在しない」



どこか夢見心地のような瞳で語り続ける。
そこにいるはずなのにいない。そんな矛盾した印象を受けた。
目の前にいる佳ノ宮まつりは、僕よりも大人びていて、僕よりずっと、世界を知っていた。
そして、僕より遥かに、世界を愛していた。
「ヒトの中にしか、始まりも終わりも無いか、妹たちも似たようなことを言っていた」

違う道を辿れば、違う結末があるのだとしたら。僕は、どんな人生を歩んでいくのだろう。

「だから、きっと、地球に心があるからだと思うな、一つになろうとするのも、地球の意思かもしれない。それは全ての星の可能性」
そう言って、まつりは空を仰いだ。
太陽はもう、真上まで昇ってきていた。
眩しい光が、僕らを照らしている。
僕とまつりだけが切り取られたかのように、世界に二人きりになったかのような錯覚を覚えた。
その横顔は、とても美しかった。

「でも、それなら、僕や君は何処に居るんだ? 星がヒトになる可能性だというなら」
「此処に居る」
まつりは僕の目を真っ直ぐに見据える。
僕の目を通して、僕ではない僕を見透かすように。
僕の奥底にあるものを覗き込むように。


「まつりが君たちにとってどういう存在だったのか聞いてもいい? まつりはね、皆城総士のこと、好きだよ」
「……そっか。ありがとう。僕も君のことが好きだ」
「えっ!?」
「え、違うの?」
「いや、違わないんだけど……。なんかこう、照れるっていうか」
「ええと、僕はそういう意味で言ったつもりだったんだけれど……」
「そういう意味ってどういう意味だろ……」
「そういうってそういう……」
「そういう?」
「そういう……」
そんな会話を交わしていると、不意に真矢がクスリと笑った。
「もー! ずっと、二人だけで話してる」
その表情は、とても穏やかで優しかった。
僕が見たことのない顔で、彼女は微笑んでいた。
「すまない」
「?」
「ふふ、二人とも可愛いなあって思って。あと、羨ましいな」
「それ、一騎も言っていたな。僕たちが仲良くしていると、君たちも仲が良くなるのか?」
「うーん、それもあるかもしれないけど、それだけじゃないよ」
「というと?」
「二人で一人みたいなところがあるから。きっと、お互いにお互いのことを一番よく分かっていて、そして理解できていると思う。それが、羨ましい」

 そう言われてもピンとは来なかったが、褒められているみたいだったので悪い気分ではなかった。
そして、僕らは三人になった。
それは、僕にとっては初めての経験だったが、不思議と心地よかった。







 そのとき、屋上の入り口から声が聞こえてきた。
そちらを見ると、そこには真壁一騎と夏々都が立っていた。
真壁一騎はこちらに向かって手を振ると、そのまま近づいてきた。
「おーい! 適切なコミュニケーションの取り方はわかったか?」

「え?」

「あ」





2023年1月21日2時08分












設定とかだけ加えて対談形式にしようと思ったけどAI側によって唐突に真矢ちゃんが。
まつりの言動とかそう言うのだけ私が設定を加えました。

0



前へ 次へ
ブックマーク トップ


-エムブロ-