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真っ白な日 03月15日 ピンポーン、とチャイムが鳴った。 朝から誰だと数少ない思い当たる顔を浮かべながらヒカルはドアを開けた。 「はーい……ってなんだキララか」 一番心当たりのある人物がそこに立っていた。 腕を組んで構えた姿勢のキララは見慣れていて、脳内で怒らせるような節を探していた。 向かいあっているだけで数秒。 先に話を切り出したのはキララの方だった。 「なんだ、じゃないわよ。今日何の日?」 「さ…裁縫の日?」 問いかけられた質問に日付を思い出す。 確か、3月14日だった気がする。 3月14日を語呂合わせに直してみたがハズレだったようだ。 キララの溜息が物語った。 「そっちの方が難しいでしょ……。ホワイトデーよホワイトデー」 「あ、そっか」 ポンと手を打つヒカルと、呆れて溜息しか出ないキララの差はどこにあるのか。 仕方なくもヒカルの部屋に上がることにしたキララは室内を一瞥した。 生活感が溢れかえり、度を超している部屋。 後ろから部屋の主が付いてきて、ふざけたような笑みを浮かべている。 「お返しは?」 「え、用意……」 ギロリ。 ヒカルが言いかけたところでキララの強い視線が突き刺さる。 用意してない、などと言葉を続けられる訳もなく言い淀み、次の言葉わ探しても言い言葉か浮かばない。 首を捻る、床に置かれた雑誌が視界に入った。 「お返しはぼ・く?」 ふと、よくある漫画のような言葉を言ってみたが、不発だったようだ。 にこりと笑ってキララの方を向くも、 あまりにも残念そうな顔が向けられていた。 「気持ち悪い!」 「冗談を本気にしないでって」 「……気持ち悪い」 本気で気持ち悪そうな顔をされたら、だから、と言い返す気にもなれなかった。 「本当に何もないんだけど」 「何も?」 「何も」 部屋にあるものはいつも通りで、増えた物もキララからするとただのガラクタにしか見えないような物しかない。 諦めかけたキララをふっと温かさで包んだ。 「こんなのじゃダメ?」 ハグハグワシャワシャ。 ギュッと抱き締められたと思えば無造作に髪を撫でる。 キララの綺麗な黄色の髪もヒカルの指に絡まった。 「……っ」 「女の子ってこういうの嬉しいんだよね?」 「……」 「プライスレスってやつ」 「値段も付けられないほど価値がないってことよね」 抵抗がない為に許されたと安心していたヒカルには不意打ちだった。 すっぽりと腕の中に収まったキララが凄い形相で睨みつけてきていた。 上目遣いがこんなにも破壊力があるなんて知らなかった、本当に。 「キ、キララ……」 僅かな照れを顔に表すことすら我慢してグッと歯を噛み締めた。 ゆるゆると剥がされた腕、離れたらそれで僅かに寒い。 「まぁ、お金もないあんたに期待はしてなかったけどまさか何もないなんてね」 「ごめん」 ヒカルは必死にただ謝るしかなかった。 「いいわよ。ちまちま返してくれれば」 「キララ?」 「利息は高くつくわよ」 「今から何か買ってきます!」 財布を持って慌てて飛び出していったのは言うまでもなく。 一人残された部屋で、キララはとりあえず片付けを始めた。 |