小話



いつ以来?なGH×薄桜鬼非夢小話



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志崎家の別邸にもうけられた『ベース』に集まり、麻衣たちはこれからの方針を決めていた。
さすがまとめ役だけあり、別邸だというのに機材を並べても有り余るスペースが確保されている。
さらに奥には休憩所もあり、男女別にしなくても悠々としていた。
志崎の話によればこの離れは、桜が植えられた時代の建物で幕末から明治初期辺りに建てられたそうだ。
木造平屋だてだが長年大事にされてきたのか、痛んでいる所など見当たらない。


「……聞いているか、麻衣」
「いだっ」


周囲をぼけ〜と見渡していた麻衣は後頭部に受けた衝撃に頭を押さえ、決まり悪げに口を尖らせる。


「聞いてますぅ」
「見取り図を貰った温度を計りに行ってこい。広くても平面的な建物だ、いくらお前でも迷わないだろう」
「誰が迷うか!ベースと休憩室以外は、普通の古民家じゃん!」


まるで子供扱いされたような気がして頬を膨らませる。
それを冷たい目で見るナルに一瞬だけ身を竦める。
なにかいけないことでも言ったか?
やるか!この!と身構え睨み返す。
ナルは暫く眺めるともう用がないと顔を反らし、器材の前に座る助手の側に歩み寄った。
いつもの毒舌もなく無視され、肩透かしを食らい麻衣は目を瞬かせる。


「何をしてる。時間が惜しい早く行け」
「はぁ〜い」


まったく人使いが荒い雇い主だ。
麻衣は間延びした返事をし、地図とペンや紙を持つとベースを後にした。







――――…………たい







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百万世界の古都



「兄者ぁーっ!」




いくら叫んでも返事は返ってこない。
忍として一等優れている兄者だあたしの声が聞こえないはずない。
……仕方ないなぁ。
闇に慣れた目を凝らし屋根の上から眼下を見渡す。
兄者の姿はおろか知らぬ町並みにあたしは驚き目をシバシバ瞬かせた。



「ちょっと待ってよ…」



ロッカクの里は隠れ里らしく森のなかにひっそりとある。
近くにも街などない。
村やそれに準じる集落はぽつぽつ点在しているけど、ここはそんな辺鄙な場所じゃなかった。
たぶんトラン共和国の首都グレッグミンスターと同じくらい。
でもあの華やかさはないみたいだった。



「……もしかして百万世界の一つ?」



あははは。まさかー!



「…………」



……ってそのまさか!?



「兄者ぁー!母上ぇー!ごめんなさーい!」



知らない間にあなた方のヒスイは別世界に来てました!
明日からトランの(隠密)要人警護の仕事だったのに!
あたしはガックリと肩を落とし、満点の星空を怨めしげに見上げる。



「キラキラ無駄に光りやがって!はぁ……衣食住確保しなくちゃ……」



生きるためには手段は選べない。
知らない世界の屋根から飛び降り、あたしは見事に着地を決めた。








「…………空から人が降ってきた………」

「え……?」




いきなり声がして勢いよく振り返りクナイを投げる。
あたしとしたことが!!気配を探らなかった!
母上たちの説教ものよ!忍失格よ!
暗がりの中、声の主は反射的にクナイを避ける。
へぇやるね。



「……っ」

「スゴいスゴい!おにーさん、反射神経抜群!」

「君は…誰だ…」

「あたし?しがないはぐれ忍。
あ、そうだ!おにーさん今晩一晩泊めてくれませんか?」

「は?」

「じつは…かくかくしかじかで」

「……」



余所行き猫を特大に被り、あたしは可愛らしく小首を傾げる。
クナイを避けたおにーさんは唖然とあたしを見つめ固まってしまっていた。
……あれ?ダメなのかな?










百万世界の古都







憑依3




何気に続く憑依話


―――――







はぐはぐ。

もぐもぐ。




目の前に出されだ食べ物に箸をつけ、勢いよく口に入れていく。
満足のいくまで咀嚼するが、私と彼女では胃の大きさに違いがあるのか、出された皿の半分でお腹が一杯になってしまった。




くっそ!自分の体だったらおかわりするのに!




「ごちそうさまでした」

「いやいや、お粗末様」


にこやかに返す近藤さんに頭を下げ、食事と一緒に出された茶に口をつける。


……ぬるい。
食事が終わったんだ、茶を代ろよ!



「よっぽどお腹が空いてたんだねぇ。周りを囲んでいるのに、気にする素振りもなかったし。
君、面白いね」

「つーか、お前どーして頓所の前で倒れてたんだよ。
……しかも腹が減ってとか……」


ニヤニヤ笑う沖田と呆れている平助を見て懐かしさに目を細める。
『過去』にいるっていうことは、もう会えない人間との邂逅もあるって分かっていたはずなんだけどな…。
ぐるっと見渡せば、懐かしい面々が呆れ半分、呆気半分……苦笑い一部と私を見ていた。


「しょうがないだろ。人探しに来て早々浪士に絡まれ、逃げ回ってたんだからな。
しかも土地勘がないから、ぐるぐる回ってたし。……それより茶をくれ。温い」

「おや、すまないね。今熱いのを入れよう」

「……お前、ちっこいわりに態度デケー」


ガックリ肩を落とした平助に笑い、井上さんが淹れ直してくれたお茶に口をつくる。
やっぱりお茶は熱いのに限る。


「…で?そこの人、私に言いたそうだが?」


腕組みをしている土方さんに声をかけると、彼は深々とため息をした。


「ちったぁー畏まれねぇのか」

「悪いな、これが地だ」


『私』のな。


不遜な態度が気に障ったのか、土方さんの眉がピクリと動き凄みを増した眼力に睨みつけられた。

ふっ…甘いな。睨みなど『過去』に散々されて免疫が出来てるぞ。

私は気にせず茶を味わう。
殺気混じりの睨みも効果なく、逆にあまりの落ち着きように土方さんは脱力したようだ。
近藤さんに慰められている。……珍しい。
隣の山南さんはずっと笑いっぱなしだ。……逆に怖い。

私のペースに周りが掻き回され話が進まずにいたが、土方さんがキレ、山南さんに話の主導権を握られ、私を伝の人の所に送ることで決着がついた。




行ってもいるかな…松本先生。





やりたいことをやるのが二週目だ!

(とりあえず茶のおかわり)
(お前!自由すぎ!!)



(あははは!!)
(……俺達集まった意味ってあったのか?)
(シッ!新八藪をつつくな!)
(…………)



.

憑依2



どうにかこうにか京に着いた。
私はどっと疲れた体を橋の欄干に預け、はぁ……と深々とため息を漏らす。

【千鶴】になったときは大分パニック状態になったが、女から男に変わったわけでも、別の世界に来たわけでもないと開き直ることにした。

……したが、これからどうするべきか…という問題に直面してしまった。



千鶴の身なりから【幕末】しかも新選組に会う前らしいと検討をつけた。
『私』と出会わなかったし、もしかしたらこれが彼女が本来行くべき道なのかもしれない。



仕方ないと重い腰を上げ京に来たわけだが、どこに行くべきか…。



体を動かしているのは『私』だが、体は千鶴のものだ。
出来るだけ危険なことに首を突っ込みたくない。


綱道さんを探しに京都に来た―――それが千鶴の目的。


彼の所在は風間たちの所に行けば簡単に知ることができる。
でも【女鬼】の千鶴が乗り込んだら風間に手込めにされてしまうし、そもそも薩摩藩邸に行っても門前払いだ。
かと言って新選組に会ってしまたら嫌がおうにも戦いに巻き込まれてしまう。



一番いいのは松本先生のところ…。



新選組と関わり合いにはなるが、比較的に第三者の立場だ。
【千鶴】が巻き込まれても、『前』のようにはならないかもしれない。


松本先生…の所に行くべきか?
しかし『あの時』松本先生は江戸に行っていて居なかった。


ふむむ…と考え込んでいた私の体を冷たい水が濡らし始めたことに気がつき空を見上げる。
考えすぎてしまったようで、日は暮れてしまい雨の中佇んでいたのは私一人だった。



イヤな予感がする。
『前』は日暮れに浪人達に絡まれ、新選組に出会ってしまった。
今回もそうなのか?

いやいや、それだけは避けたい!
ここは穏便に穏便に。綱道さんの行方が判ればいいんだし。



私はイヤな考えを否定するように頭を降り、雨の道を走り宿を目指した。













……っていうのに、なんで『今回も』巻き込まれてもるんだぁ!?



羅刹の攻撃を何とか避けながらどうやって切り抜けようか考える。
しかし千鶴の体は私の体より動きが鈍く、避けるとき纏めていた髪を切られてしまった。



この野郎!!



千鶴の髪は私のお気に入りだったんだぞ!!




纏まっていた髪が無惨に散り、バサバサになった髪が雨で顔に引っ付く。
頭にきた私は羅刹に足払いをかけてやった。

無様にも転ぶ羅刹に鼻で笑い、その隙に身を翻し路地裏を走った。
追いかけてくる羅刹に追いつかれるわけにはいなかい。

どこをどう走ったのか知らないが、いつの間にか見慣れた場所に出ていた。



まてまて!!新選組はダメだ!!
また色々厄介なことに巻き込まれるぞ!?



新選組の看板に手を置き、どうするか考えながら後ろを振り返る。
そこで奴らが追いかけて来ないことに気がついた。


撒けた……か?
もしかしたら土方さんたちが粛清したのかもしれないが…あ、ヤバい……。



きゅるる〜



安心したら急にお腹が鳴った。
しかもお腹が空きすぎて目眩が…。
朝しか飯を食べていなかったしなぁ…。



そんなことをぼんやり思い、私は意識を手放した。





結局は定められた運命


(あ、土方さん行き倒れがいますよ)

(あぁ!?物好きにもほどがあんだろ…こんな所で倒れるか!?)

(……副長)

(ちっ……斉藤頓所に運んどけ)

(御意)

憑依ってか(笑)


秋風が千鶴に憑依しちまった話(笑)
某所でメロンに憑依した話をよんで楽しかったので(笑)













朝日を浴び徐々に意識が覚醒しはじめる。
まだ眠気には勝てず私は横に転がり『抱き枕』を探した。
目を瞑り手探りで温もりを探すが、布の感触だけ。
温もりも柔らかさもなく、違和感で目を開けてみた。


………ここはどこだ?



見慣れない天井をぼーと見つめる。
木目が人間の泣き顔に見える。さらに隣には怒った顔が見え、なんとなくいじめっ子といじめられっ子なんだな…と思った。
そんな事をとりとめもなく思っていると、外が騒がしくなり始め私はやっと体を起こした。


頭が軽い…。こんなに軽いのは久しぶりだ。


結婚したあと伸ばし始め、今では腰辺りまで伸びている。
あと数年すればあの長さに戻るはずだ。
それなのに、なんでこんなに軽いんだ?


髪を一房掴む。いつの間に切ったのか、記憶にある長さではなかった。
おそらく肩下辺り。しかも黒一色ではなく、少し茶色がかっている。

私は目を瞬かせ、部屋の片隅にあった小さな鏡台に近づいた。


…………まて。


まてまてまてまて、待てぇぇぇえええ―――――!?



なんなんだ!?これは!


鏡台には見覚えのある少女が驚いた顔でコチラを見ている。
私が動けば彼女も動き、夢だろ!?と頬をつねると鏡の彼女も頬をつねり涙目になった。



ちょっとまて!?なんで千鶴がいるんだ!?
しかも若い!!
いやいや、それより私はどこにいる!?


慌てて周囲を見回すが千鶴の姿はなく、私の姿もない。
鏡を見れば焦った顔の千鶴が映る。



これはもしかしなくとも………。




「おや千鶴ちゃん、やっと起きたのかい?もう飯の時間だし、下におりてきなよ」



外からひょっこりと姿を現した体格のいいおばちゃんに声をかけられ、私は頬をひきつらせた。


そんな私をおばちゃんは不思議そうに眺め、もう一度早く来なよと言うと去っていった。




…………マジか。







私に起きた天変地異



(…………もう一度寝れば戻るかも)
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