紅茶一杯。



壁尻師匠と影山兄弟
2017年3月27日 17:12

話題:二次創作文

※モブサイコ100
※スケベはないよ
※尻を叩かせたかっただけかもしれない。


「あ、モブ?ちょっと来てくれ。ああ、そうだ緊急事態だ。だから早く来い。」
霊幻は壁に胴体を挟まれた状態で茂夫に電話をかけている。図としては、壁にあいた穴を潜り抜けようとしてハマった状態だ。腕と上半身は前へ、へそ辺りから下が後ろへ。
勿論、霊幻が自分で入ったのではない。嵌められたのだ。超能力者に。
「え?これからカラオケ?そんなもん後で俺と行けばいいだろ。とにかく早く来い、超特急で!!」
霊幻は通話を切った。あとは茂夫を待つしか今の自分に出来ることはない。
「携帯手に持ってて助かったな…」
ポケットに入れたままだったら助けすら呼べなかった。霊幻は自分の悪運の強さに感謝した。ついでに自画自賛もしておく。茂夫が来るまで特にやることが無いのだ。

霊幻を壁に嵌めた超能力者は最近噂になっていた。誰彼かまわず、まさに通り魔的犯行で人を壁に嵌める。
なにが目的かは不明だった。嵌めたらそのまま去ってしまうからだ。追われていたからとかではなく、本当に、ただそこに居たから、見かけたから、が理由のようだった。
そして今回、壁に嵌められた被害者が依頼人としてやってきたのだ。迷惑なので捕まえてほしいと。警察へ誘導したが、依頼人は警察には何度も行ったがなにも解決しなかったと憤慨していた。だからここを頼ったのだと。
依頼人の女性は泣きながら、身動き出来ない恐怖を語った。スカートだったので通りすがりの小学生にスカート捲りまでされて恥をかいた、怖かったと。
そんな依頼人を見捨てられず、コースも一番高いのを選んだため、引き受けてしまった。
そして霊幻は下調べに来て見事に壁に嵌められた。
モブ連れてくるべきだったな、と反省する。しかし本当に唐突で、霊幻は何も出来なかった。対峙するでもなく姿を知らないままあっという間の壁だった。
壁に嵌まったのが自分だけで良かったのかもしれない。と霊幻は自分の失敗を慰める。
もし茂夫も居て一緒に壁に嵌ってたら万策尽きてたところだ。
まぁ茂夫ならば自力で脱出出来るだろうし犯人を引きずり出す事も出来るだろうが。
霊幻はあえてその事から目を逸らしていた。大人になると自分の失態を素直に認めにくくなるものだ。
霊幻は空を見上げた。雨じゃなくて良かったな…とぼんやり思った。微妙に人通りが少ないのも助かった。見せ物になるのは恥ずかしい。モブまだかな…。などと、ぼんやり考える。霊幻は暇だった。



「師匠。」
茂夫が来た。待ち望んでいた救世主なのに、後ろに続く付き添いに気付いた霊幻は真っ青になった。
「今あからさまに顔色が変わりましたね。」
律が不敵な笑みを浮かべている。何で連れてきた、と問い質したかったが、下手な言動は慎まなくてはならない。なにをされるか分かったものじゃないからだ。
「霊幻さんに何かあったらしいと聞いて、心配したんですよ。」
とセリフと表情が一致してない律にただひたすら恐怖する霊幻。
「顔とセリフが一致してないぞ!」
ついテンパって突っ込みを入れてしまった。律の、腕を組んだ仁王立ちがとても怖い。
「心外ですね。」
そう言ってあからさまに傷付いた溜め息をつけば、茂夫が霊幻を窘める。なんで俺が…と不満だったが、今は感情に左右されている場合ではない。一刻も早くここから解放されなくては何も出来ない。
「とにかく今一番に優先すべきはこれだ。モブ、この壁を破壊してくれ。」
霊幻に言われ、それもそうだと茂夫は壁に手のひらを向ける。が、なにも起きない。
「あれ。思ったより強力だ…」
茂夫は力を強める。しかし壁はびくともしない。茂夫は霊幻の後ろ側を見に行った。
「おいおいマジかよ…お前だけが頼みの綱なんだぞ。」
不安になる霊幻。
「律。そっちからも力を当ててみてくれる?」
壁の端からひょこっと顔を出す茂夫。壁自体はそれほど厚みは無かった。だからこそ重力で辛い部分もある。基本的に長時間耐えられる体勢ではない。霊幻も何気に腰に負担が来ていた。
「師匠、足が震えてますよ。」
「しんどいんだよ…!分かれよ!」
早く助けろよ!と訴える霊幻に、茂夫は律とタイミングを合わせ壁に攻撃した。しかし壁は壊れなかった。
「モブまだか。」
「うーん…難しいですね。これ以上パワーを上げると師匠に影響が出るかも。」
茂夫が言うと、霊幻はキリッとした顔で
「よし、じゃあ別の方法を考えよう!」
と言った。



とりあえず改めて調べてみよう。と茂夫と律は壁と状況を調べた。どこからどうみてもただの壁にしか見えない。そして霊幻はその壁に嵌った残念な人にしか見えなかった。
「改めて見ると師匠カッコ悪いですね。」
「そんな事には気付かなくていいんだよ。お前はこの壁をどうにかする方法を全力で考えてくれ。」
霊幻は腕を組み不貞腐れる。
「どこにでもある壁ですね。ただ破壊出来ませんけど。」
厚さもそれほどない。なのに酷く頑丈だった。押しても倒れず動きもしない。よく見たら地面に埋まっていた。どれくらい埋まってるのかは分からない。
超能力が関わっているので、ある程度の法則は無視されているようなものでもある。だからこの壁が理不尽な建ち方をしていても、『超能力だから』と言われたら納得するしかないのだ。
「能力者を見つけるか…」
律はあちこち調べながらブツブツと考え込んでいる。
霊幻は眠たそうにあくびをした。
「こっちが必死に調べているのに暢気なものですね。」
律に睨まれて霊幻は苦笑いした。
「いや俺も手伝いたいのはやまやまなんだが…」
動けないし。と頭を掻くと、律が明らかに、何でこんな人のために頑張ってるんだろう…な目をした。
「うわぁ〜…お前の言いたいことがなんか解る。目力すげーな律。」
と引いてる霊幻。つくづく失礼な人だなと律は腹が立つ。
「ん?モブ?」
霊幻が壁の向こうに居る茂夫に声をかける。
「ちょ、モブ、やめろっ。くすぐったい!」
抵抗してるのかもぞもぞ動く霊幻。律は不思議そうに霊幻を見守った。
だんだん霊幻の声に焦りがまじる。
「おいモブなにしてんだ!おい、やめろって!冗談が過ぎるぞ!ちょ、律!お前の兄貴が俺の尻触ってるぞ!止めてこい!」
「なに馬鹿げた事を言ってるんですか。兄さんがそんな事するわけないでしょう。」
なんかの病気ですか?と兄を変態扱いされて不機嫌な律。
「違うって今まさに…!おいモブ!ばかっ ダメだそれはダメだぞ、おいっ!!」
一層ジタバタしだす霊幻に律は呆れていたが
「律!モブがズボン脱がしてる!!マジで止めてくれ!お前の兄が捕まるぞ!」
と必死な形相で訴えてきて、霊幻が質の悪い冗談をしているのでは無いのかもしれないと心配になった律。
「兄さん!?」
少々焦りながら裏側に向かうと、そこには発情した知らないオッサンが霊幻のベルトを外しズボンを下げて居た。一瞬で律の顔つきが冷ややかなものになる。直後にオッサンのネクタイがギュッと絞まり、意識が落ちた。
伸びたオッサンを足で転がし退ける。前に戻ると
「知らない不審者だったんで、落としておきました。兄さんどこ行ったんだろう?」
と霊幻に報告した。なにそれ怖い、と震えた霊幻だったが
「あの、律君…ついでにズボン直して欲しいんだけど…」
と下手に出てお願いする霊幻。ズボンが膝まで下がったままだった。
「ケツから風邪引いたら困るから。頼むよ。」
と言われ、渋々裏側に向かう律。
霊幻の下着姿(尻)を初めて見た律の心はとても冷えていた。あの不審者はこれのどこに興奮したんだろうか、と無表情に少々の苦味が混じったような顔でまじまじ眺めてしまう。
「り、律く〜ん?」
この不利な状況で律の機嫌を損ねたらアウトだ。霊幻は慎重かつ速やかにズボンをあげて貰うように頑張っている。
「どうした律、ズボンの上げかたが分からないのか?あのなまずベルト付いてるほうの左右の端を持って引き上げ…」
バチン!!と尻を叩かれる霊幻。
「イッテェ!!」
壁の向こうから
「馬鹿にしないでください。」
とお叱りを受ける。無防備な尻を強めに打たれ、ジンジンと痺れるような痛みに悶える。
「手加減しろよ…!」
「今のは霊幻さんが悪いですよね。」
確かにそうだが、霊幻は腑に落ちない。早くズボンを戻して欲しい。
そんなやり取りの後、ようやく律がズボンを上げてくれた。超能力でやろうか迷ったのだが、ベルトが難しいと考え、もたつくよりは手動がいいかと判断した。それを決めるのに時間が少々かかったのだ。
霊幻のベルトをはめるのに、どうしても霊幻の腰に覆い被さらないといけない。
律は観念して後ろから霊幻の腹に腕を回し、ベルトをはめてチャックを上げた。
「…律なにしてるの?」
ビクッと肩が跳ねる。振り返ると茂夫が滝汗をかいて困惑していた。
その表情に今の自分を客観的に見てみれば、完全に『これ挿入って(ry』状態だった。
「違うよ!?」
律は全力で否定した。



「あっちでお婆さんが引ったくりに遭ってたので、捕まえに行ってました。」
茂夫は側を離れた理由を述べ、謝罪した。自分が離れたばかりに霊幻に怖い思いをさせてしまったと反省する。
そんな茂夫に霊幻は、お年寄りを助けた事を褒めた。
「俺の方は律のおかげで助かったからいいよ。気にするな。」
と茂夫を励ます。尻をひっ叩かれた事は内緒にした。
「さて、脱出方法だが。」
本題に戻る三人。三人で顔を合わせ会議する。と、いきなり壁が消えた。突然の事でそのまま地面に倒れる霊幻。
「師匠!?」
「どうして!?」
霊幻を助け起こそうとしゃがむ茂夫。近くに犯人が居るのかと辺りを警戒する律。
ダッシュで去っていくさっきの知らないオッサン。
「え…」
律は茫然とオッサンを見送る。
もしかしてアレが犯人?
「律!あいつ捕まえろ!!」
顔面を打って痛みに呻きつつ、律に命令する。
律は反射的に力を使った。



依頼人の元に連れていくと、拘束されてる犯人を依頼人の女性はひたすら蹴った。罵りと共に蹴り続けた。オッサンがだんだん恍惚な表情になってきたので、霊幻は茂夫の目をそっと両手で塞いだ。
「師匠?」
「お前は知らなくていい世界だ。見るな。」
隣で律はオッサンにドン引きしていた。
結局犯人は然るべき組織に渡した。なぜかオッサンに、最後に素敵な思い出をありがとう。新しい世界が開きました。と礼を言われ三人は震え上がった。
あんだけボコボコにされたオッサンは、とても幸せそうだった。

「……幸せの形って、いろいろ有るんですね…」
と茂夫が無理やり締めた。





・壁の厚さの設定、結構難しいですね。壁が厚すぎると動けなすぎるし薄すぎても駄目ですし。


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モブサイコ100




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