紅茶一杯。



おまじないとモブ
2017年3月31日 16:08

話題:二次創作文

※モブサイコ100
※おまじないネタ
※モブ→霊



「なぁエクボ。パンダって何か知ってるか?」
多忙な茂夫の代わりに相談所に派遣されたエクボが霊幻を見る。
「バカにしてんのかテメェ。」
エクボは呆れたように言う。
「…モブがな…」
「あ?」
「モブが最近、俺の背後で呟くんだよ。『パンダ』って。」
もしかして呪いの一種かなって。と霊幻は自分のデスクで、立て肘をついて口元を隠している。
「そんな呪いは聞いたことねぇな。てか霊幻、お前シゲオに恨まれるような事してる自覚があったのか。」
「まぁ、そりゃあ……」
時給とか急な呼び出しとか休日潰したりとか。霊幻だって申し訳ない自覚はある、一応は。
「でも、シゲオだからな。呪ったりはしないだろ。」
エクボの言葉に霊幻は頷く。本気で茂夫の呪いを疑ってる訳じゃない。しかし、謎すぎる『パンダ』の呟き。
「目に隈があるのをコッソリ教えてるとか…」
「ねぇだろ、クマ。」
霊幻の仮説をすかさずバッサリ切るエクボ。
「俺をパンダにしたいとか…」
「なんでだよ。」
「俺が聞きてぇわ。」
あとは何があるだろう。霊幻は頭を抱えた。
「聞き間違いじゃねぇのか?」
エクボが霊幻の側まで降りてくる。
「パンダに似てる発音てなんだよ。」
霊幻に言われ、小さな腕を組むエクボ。
「…ハンダ…とか…」
「ハンダってハンダゴテか?あいつ俺に何しようとしてんだ。」
ちょっとビビる霊幻。
「他に似た発音か……いや、思い付かねぇな。やっぱり呪いだろ何かしらの。シゲオに相当恨まれるような事したんだろお前。」
「面倒くさくなってんじゃねーよ。」
恨みか……思い当たる節がある分、否定できない。
「呪いだとして、俺をパンダにしてどうするつもりだ、モブの奴。」
「売り飛ばすんじゃねぇか。」
サーカス辺りに。と鼻をほじりながら言うエクボ。飽きたらしい。
「笹なんか絶対食わねぇからな、俺は!」
高級霜降りステーキじゃなきゃ食わねえからな!!と抵抗と思われる迷言を発する霊幻。
タイヤになんぞぶら下がってたまるか!とエクボを指差し宣言していると、ドアが開いた。客かと慌てて姿勢を正すと、茂夫だった。
「師匠、タイヤにぶら下がるってなんですか。」
私服姿の茂夫がドアを閉める。
「よおモブ。お前今日来れなかったんじゃないのか。」
「用事が早く済んだので。エクボ、ありがとう。もう大丈夫だよ。」
とバトンタッチをする茂夫。エクボは茂夫の側に収まり、霊幻に呆れた視線を向けた。
「それで師匠、タイヤって…」
「モブ、タイミング良かったな。さっき来た常連客が高級チョコくれたぞ。生チョコだから今日中に食べないと駄目になるからな。いやぁ良かった良かった。」
と冷蔵庫へ向かう霊幻。その背中を見送った茂夫は、何か言いたげにエクボをじっと見上げる。エクボは冷や汗を垂らしながら目を逸らしていた。



「師匠、さっき」
「どうだモブ。高級チョコうまいだろ。一粒380円だってよ!」
「ええっ!?こんなに小さいのに!?」
茂夫からの質問を遮る霊幻。チョコの値段に思わず茂夫の関心がそちらに向かい、ホッと胸を撫でおろす。
「シゲオの時給より高ぇのか。」
ピシッと場の空気が固まる。
エクボ貴様…!と霊幻が睨むとエクボは顔を逸らし、素知らぬふりをした。
「師匠、そういえばさっきのタイヤって」
「モブ!先に俺から質問させてくれ。」
キリッとした顔で茂夫を見る霊幻。茂夫は「はい。」と素直に譲った。
「………お前さ、最近……俺をパンダにしようとしてるだろ。」
「………………はい?」
茂夫がポカンとする。
「パンダって何回呟くと相手をパンダに出来るんだ?俺はあと何回でパンダになる?」
「…はい?えっと…… え?」
茂夫が明らかに混乱している。様子が変だな…と訝しげになる霊幻。
「お前最近よく後ろでパンダって呟いてるだろ。」
それともやっぱりハンダゴテなの?と不安になる霊幻。ハンダゴテだとしたら殺意を抱いている可能性も浮上してしまう。流石にそこまで恨まれてるなんて思いたくはなかった。
そんな不安をよそに目の前の茂夫は意味が分かったのか、みるみる顔が赤くなっていった。
「モブ?」
声をかけるとパクパク口を開け、しかし言葉にならず次にはギュッと目を瞑って俯いた。
茂夫のこの反応にサッパリ訳が分からない霊幻は首を傾げる。
呪おうとしたのがバレて恥ずかしいのか、パンダになる呪いをかけたのがバレて恥ずかしいのか、霊幻は分からず困惑する。
やがて茂夫は全身真っ赤なのであろう、顔と手を赤く染めたまま体調不良で帰りますと出ていってしまった。
元からそろそろ終業時間なので構わないが、パンダの呪いは何も解らなかった。
と、足下に紙を見つける霊幻。拾い上げると、そこには茂夫の字で『おまじない』が書かれていた。


『両想いになれるおまじない

好きな人の後ろを歩き、小さな声で「パンダ」と三回唱える。

注意
心の中ではなく、声に出すこと。』



「なんでパンダなんだ……」
と突っ込みながらも、こんなものを真面目に一生懸命やっていたのかと思うと、霊幻の顔は真っ赤になった。






・なんでパンダで両想いになれるんでしょうね。


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