紅茶一杯。



シーサーとモブ
2017年4月3日 17:26

話題:二次創作文

※モブサイコ100
※本日の記念日
※エクボ災難


茂夫が相談所へ向かっていると、道端に小さな塊が落ちていた。視線だけを向けると、その塊は毛むくじゃらで、ぷるぷる震えている。
珍種のネズミかと茂夫が興味を持つと、むくりと塊が体を起こし、茂夫と目が合った。

ネズミサイズの犬だ。

茂夫の最初の感想はそれだった。長毛種で、もじゃもじゃな体を震わせ、目からはポタポタ涙を零して怯えていた。
茂夫が動けずに小さな犬を見ていると傍らに慌ててエクボが現れる。
「シゲオ!はやく離れろ!コイツは…!」
焦っているエクボに、ネズミサイズの犬は一瞬目を見開くとすぐさま威嚇体勢に入り、エクボを睨み付けた。そして一声鳴くと、エクボは「ぐわぁぁぁぁ!」と飛んでいった。
「エクボ!?」
驚愕してエクボを掴まえようと手を伸ばしたが、吹っ飛んでいく速さには勝てなかった。そして足下を引っ張られる感覚。
見れば、今し方エクボを鳴き声でふっ飛ばした小さな犬が、茂夫のズボンの裾を噛んで引いていた。
「……なにするんだ。」
なんでいきなりエクボを飛ばしたんだと、警戒する茂夫。
犬はうるうると目で悲しみをアピールしてくる。そして縋るように体をこすりつけて甘えだした。
「…なにが目的なの?」
犬はキョトンとした顔になる。いままでこの媚びにひれ伏さない人間は居なかったのに、とでもいいたげな顔だった。
茂夫は溜め息をつき、犬を掴んだ。犬は抵抗せず、茂夫に何故か好意的だった。
今のでエクボが消滅した気はしない。なので茂夫はそれ以上怒る気を無くした。
この犬が自分の側にいる限りはエクボは帰ってきそうにないなと観念して、とりあえず迷子であろう不思議なサイズの犬を相談所に持っていった。
困った時は霊幻に相談するのが一番だと茂夫は知っている。


「よぉモブ。シーサー拾ったらしいな。」
行くなり説明するより先に指差し言われて、茂夫は手のひらで寛ぐ犬を見た。
「シーサー?」
「そう、お前の手に乗ってるやつだ。エクボが震えながら言ってたぞ。」
笑う霊幻に嘘つくな!と現れるエクボ。
「エクボ。」
「おっとシゲオ。今あんまりこっちに来るなよ。また吹っ飛ばされたらかなわねぇからな。」
衝撃波が結構痛ぇんだよな、と呟くエクボ。エクボによると拾った犬は犬ではなく獅子で、シーサーの雌であり、あらゆる災難を弾いて中に入れない役割を持っているらしい。
そのシーサーに一目で気に入られた茂夫を守るため、悪霊であるエクボは吹っ飛ばされた。
「だから今は師匠に憑いてるんだ。」
納得する茂夫に、エクボは少しだけ寂しそうに
「近寄れねぇからな…」
と呟く。
「不本意そうだな。」
「そりゃ不本意だからな。」
霊幻の茶々に返すエクボ。
「まぁ俺も悪霊に憑かれて不本意だよ。」
と鼻で笑う霊幻。
「せっかくだからお前の生活を隅々まで暴露してやろうか。」
と、脅すように悪どい顔で凄むエクボ。しかし
「このスケベ。」
と真顔で言われ、そういう意味じゃねぇ!と悔しそうにキレてしまった。霊幻の方が少々煽り上手だったようだ。
ぷんすか憤慨しているエクボはさておき、霊幻は茂夫の手のひらにいるシーサーに手を出す。
しかしシーサーはプイと顔を背け相手にしなかった。
「フラれちまったな。ああそうか、エクボが憑いてるもんな。」
と苦笑する霊幻。
「言い訳すんなよ。お前がモテないだけだ。シーサーの雌にすらモテないんだろ。」
仕返しとばかりにニヤニヤするエクボに無言で盛り塩パンチをかますが、相変わらずすり抜けて終わる。
たまには当たれよ、と舌打ちする霊幻にだったらせめて清めた塩を使えよバカ、と軽口を交わす。
ポンポン飛び交う二人のやり取りを、茂夫は楽しさ半分、寂しさ半分で眺めていた。どちら共と、そんな風に軽口を叩き合って笑い合った事はない。
二人の空気は、少し羨ましい気がした。そんな茂夫を下から眺めていたシーサーが、唸り出す。
茂夫が何事かと見下ろせば、手のひらに居たシーサーが飛び上がり、エクボに突っ込んだ。
エクボが悲鳴を上げ壁に激突する。霊幻と茂夫は驚愕して同時にエクボの名を叫んだ。



「つまりモブが寂しがったからシーサーがエクボ(悪霊)をこらしめたと。」
霊幻は笑いを堪えながら言った。エクボは少しボロくなり息もあがっている。
「そうだ……だからさっさとソイツを帰すなりしろ。」
でないと俺様がやばい。と霊幻の背後にヨロヨロ隠れるエクボ。相手が神聖な物である事もあり、かなり不利なようだ。
あのエクボが霊幻の後ろに隠れるとは。流石の二人も心配になる。
「狛犬じゃなくシーサーだからなぁ。拾った周辺にシーサー置いてる家なんかあったか?」
自分の中で地図を広げる霊幻。茂夫はシーサーを撫でながら思いだそうとする。しかし思い当たる家は無かった。
「どっかに対がいるはずだ。」
エクボは霊幻の頭の陰から身を乗り出す。俺を盾にするな、と言いつつ霊幻は嫌がってはいない。なんだかんだで霊幻もエクボを気に入ってはいるのだ。
シーサーは威嚇するが茂夫が抑える。茂夫にはどこまでも甘いらしく、抑えた手にじゃれついていた。
「対か……モブ、シーサーの気配を探ることは出来るか。」
「やってみます。」
茂夫が目を閉じて集中すると、シーサーは茂夫の腕を上り肩に移動した。
「…ありました。近所に似た気配があります。」
「それじゃ行くか。いつまでもエクボ憑けとくと運気落ちそうだからな。」
「そうだな、手始めにてっぺんツルツルにしてやるよ。」
こめかみらしき場所をピクピクさせながら言うエクボに、それはマジで止めろ。と割と真面目なトーンで返す霊幻。



果たして対のシーサーは居た。二匹は再会を喜び、キャッキャとじゃれ合う。微笑ましく眺めていた霊幻が
「…なんつうか、対の方ちょっとモブに似てるな。」
目つきとか、と言われ若干ショックを受ける茂夫。
茂夫のショックを感知したシーサーが対と一緒にエクボを吹っ飛ばした。効果二倍でホームラン級にかっ飛んでくエクボを
「おー 飛んだなぁ〜。」
と見送る霊幻に
「エクボごめん…」
と流石に申し訳なくて謝る茂夫に
「今の俺様関係ねぇぇぇぇぇ……」
と嘆きながら消えていったエクボ。







・シーサーがモブに懐いたのは対に似てるから。エクボばかり攻撃されるのは悪霊だから。
最初は師匠に対のシーサー憑けようかと思ってたけど、エクボの逃げ先にしたくなったので止めました。
師匠とエクボは悪友派なので、軽口叩き合いながら何気に楽しそうなのとかが好きで、ついさせてしまう。

因みにシーサーは沖縄から孫家に遊びに来たおじいちゃんの木彫りのお土産だったんだけど落としてしまってしかもそのシーサーには魂が宿ってたっていう完璧に知らない人たちのシーサーでした。って、今考えました(相変わらずの見切り発車)



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モブサイコ100




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