紅茶一杯。



呪いとモブ
2018年11月15日 21:52


話題:二次創作文

※モブサイコ100
※グロ描写あり
※色々見切り発車


茂夫は夢を見ていた。ここ最近よく見ているものだった。
真っ暗な世界に、前方で子供がかごめかごめをやっているのだ。和装の、いかにもな髪型の子供達。それをぼんやりと眺め、またか…と茂夫は思った。
子供達が遊んでいるのを眺める。この夢になんの意味があるのか解らなかった。
明日、霊幻に相談してみようかと茂夫が考えていると、子供の一人が声を掛けてきた。顔を向けると、子供の顔はグズグズに焼け爛れていた。
ビクリと茂夫がたじろぐのを見ても子供は笑って手を差し出す。
「あそぼうよおにいちゃん。」
子供の手を見ると焼けた跡があり、赤黒かった。茂夫が戸惑っていると、なおも遊ぼうと誘い、ついには茂夫の手を掴んだ。
「うっ……」
手に伝わる不快感に思わず出てしまった声を、とっさに空いてる手で抑える。子供は気にする様子はなく、茂夫を輪の中に入れた。
真ん中の空いたスペースに連れてこられた茂夫は
「あの…?」
と、どうして良いのか分からず困惑する。
「おにいちゃんがあてるんだよ。うしろにいるのがだれか、あててね。」
言うなり歌が始まる。茂夫はあたふたして「えっ。」「あの、ちょっと…」とストップを掛けたかったが、止まってはくれない。手を繋ぎ並んでいる子供は皆焼け焦げていたり爛れていたりと酷い状態だった。けれども子供らしく可愛らしい高い声で楽しげに歌っている。
どうすればいいのか。とりあえず、この一回だけでも付き合えば、夢から覚められるのではないか。と茂夫は思った。
いつもはただ離れた場所からこの子供達がかごめかごめをやっているのを眺めていて、その内に目が覚めていた。そういえば今日は随分近い距離でかごめかごめをやっていたなと茂夫が気付く。
今回はいつもと違うようだった。ならば参加するのにも何か意味があるのかもしれない。今まで誘われた事は無かったからだ。
歌いながら自分の周りを回る子供達を眺めた。目を瞑らない事を特に咎められはしなかった。少しして歌が終わった。
「うしろのしょーめん、だーれだっ!」
子供達は楽しそうだが茂夫は真顔のままだ。ここに来て気付いたが、この子供達を全然知らない茂夫は、どうやって当てれば良いのか分からなかった。悩んでいると、周りから早く早くと急かされる。
焦る茂夫の背中に、声が掛けられた。
「モブ。」
茂夫がフリーズする。なぜここに居るのか。また無意識に呼び寄せてしまったのか。声に反射的に振り返ろうとするのを子供が叱る。茂夫は早く振り返りたくて、確認したくて堪らなかった。ここに来て急に酷く嫌な予感がしたのだ。クスクス嗤う子供達が、この世界の不気味さが、今更にゾクゾクと悪寒を走らせた。
この世の者じゃない子供達なのだと気付いた。起きたら霊幻に相談するつもりだった。それなのに。
「モブ。」
もう一度、呼ばれた。ああ、間違えようもない。と茂夫は震える声で
「霊幻師匠…」
と答えた。ここにいて欲しくなかった。だってここはただのいつもの夢の中ではないから。もうそれに茂夫は気付いてしまったから。
子供の陽気な「あたり〜♪」の声で、すぐさま振り返る。
と、茂夫の目の前にはニタニタと嗤う子供が、血の気がなく瞼を閉じた霊幻の生首を持っていた。
霊幻を認識した瞬間、茂夫の感情は振り切れた。身体中の血が一瞬で沸騰したような感覚と怒りに飲まれ、直後に本能で霊幻へと手を伸ばし、感情のままに慟哭を上げると子供達を含む全てが吹き飛んだ。真っ白な何もない空間で、茂夫の腕には青白い顔の霊幻の頭が抱かれていた。


目を覚ました茂夫は荒い息をつき、全身汗びっしょりだった。そして眼前には、自分を見下ろすエクボがいた。まだ整わない息をつきながら
「エクボ…」
と掠れた声を出す。悪夢に魘される自分を心配したのだろうかとエクボを見つめると、エクボはため息を吐いた。
「やっちまったなシゲオ。お前さん呪われたぞ。」
エクボの残念そうな声に息を飲む。
「…え?」
一拍おいて声を出すと、エクボは憐憫の眼差しで
「また厄介なもんに関わっちまったな。今日から一週間、苦労するぞ。」
と言った。
「…どういうこと?」
「今日から一週間、夢の中で体の一部を回収しなきゃならねぇんだ。7つな。もし回収できなければ一週間後、回収出来なかった部分を失うことになる。そういう呪いだ。」
「なんでそんな……」
そんな呪いを受ける理由がない。茂夫はショックだった。
「俺様が知りてぇよ。ちょっと目を離した隙に変なもんに関わりやがって。…更に面倒なのは回収対象が自分じゃないことだな。シゲオ、誰になった?」
エクボの言葉に戸惑う茂夫。エクボは心なしかニヤついていた。
「……霊幻師匠。」
と小声で答えると、「……そうか。」と妙な表情で返ってくる。
「じゃあ、まぁ頑張れよ。お前なら回収も余裕だろ。どうしても助けがいる時は呼んでくれ。行けるか分からねーけどな。」
と気軽に話すと、励ましの意として片手を挙げた。



かくして茂夫は、一週間の強制悪夢ツアーが決定した。





エクボがニヤついて対象者を訊いたのは、呪いを受けた者の『大切な存在』が対象に選ばれるから、て設定を入れられませんでした。
わらべ歌と絡めてモブ霊をやってみようとしたら失敗した感じです。難しいです。
久々に長文書いたや………


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