紅茶一杯。



呪いとモブ(4日目)
2018年11月18日 19:16

話題:二次創作文

※モブサイコ100
※設定の破綻(わらべ歌、夜の夢の縛り消失)


「おいモブ大丈夫か?」
バイトに来ていた茂夫は霊幻の声に返事をしようとして、吸い込まれるように意識が遠退いた。ガタンと何か倒れる音と、霊幻が焦ったように茂夫を呼ぶ声と、頭にズキッと痛みが走ったのは分かったが、抗えずに意識はズルズルと悪夢へと引きずり込まれた。

連日悪夢で霊幻を救うのに忙しく、ちっとも体が休まっていない。日中は日中で肉改部や勉強や人間関係で忙しない。限界が近かった。

「だーるーまーさーんーがーこーろーんーだっ!」
茂夫の意識がはっきりしてくると、そんな声が聞こえた。辺りを確認すると、向こうの木の下に人がいて、茂夫の近くには何人かの子供達がいた。
本日は『だるまさんが転んだ』をやっているらしい。状況を理解すると、さっそく霊幻を探した。早く回収して早く帰りたい。というか寝たい。辛い。とぼやける脳みそで思った。
クラクラする頭で霊幻を探るが、見付けられない。周りの気配に対して霊幻の気配は慎ましすぎる。
その上茂夫は寝不足なので、超能力が上手く働かない。
日が経つにつれて不利になる。これも呪いの一環なのかと茂夫はどんよりした目で思った。
ゲームが進むなか、茂夫は微動だにしない。のが気に入らない鬼役が茂夫を注意する。
「お前ちゃんとやれよ!」
叱られて茂夫が鬼役を見ると、妙な感覚を感じた。全く知らない相手なのに、なんだか懐かしい気がするのだ。
姿は全身シルエットで顔も分からないのに、その雰囲気というか、喋り方というか。
「……もしかして、霊幻師匠?」
シルエットは答えなかった。ただ、そう思い始めると佇まいが霊幻にしか見えなかった。疑惑の人物に意識を集中させ気配を探ると、微かに霊幻を感じた。

ならば茂夫のやることは決まった。だるまさんが転んだで近づいて、霊幻を捕まえればいい。どうりでさっきから判定がやたらと厳しかった訳だ、と茂夫は思った。15人くらい居た子供達はいつの間にか茂夫を入れて5人しか残っていない。鬼役がいちいち厳しい判定をしたからだ。意図は分からないが、とにかく動かなくては。
茂夫がやる気になった事に気付いたのか、鬼役はゲームを再開した。

判定が厳しすぎる。茂夫はなかなか霊幻の所へ行けなかった。残ってる者は三人しかいない。そして随分時間を食った。今何時だろう、と茂夫が思った矢先、足下の地面からエクボが生えてきた。
「シゲオ、頑張ってるか。」
体がまだ半分埋まったまま片手を挙げている。
「うわ。」
思わず声を上げると、「うわ」とはなんだ「うわ」とは。とプンプン怒ってエクボが全て出てきた。
「で?なんだこの状況は。」
茂夫の側までくると辺りを見渡し、キョトンとしてるエクボ。
「だるまさんが転んだをやってるんだ。鬼が師匠なんだよ。勝って捕まえないと。」
と鬼役を指差す。
「なるほどな。…しかし変な所だな。感覚が狂いそうだぜ。」
と浮かない顔になるエクボ。茂夫は気付かなかったが、エクボが言うにはえらく異質な空間になっているようだ。ぐにゃりと歪んだ空間がそこかしこにあり、うっかり触れると眩暈を起こしたようになるらしい。
「なんで来たの?」
前は来なかったくせに。と茂夫は不満気な目を向ける。
「帰ってくるのが遅いから助っ人だよ、助っ人。シゲオなら楽勝だと思ってたが、こりゃ確かに……キツイな……」
霊幻も心配してたからな、と聞いてバイト中だったことを思い出す。そうだ、相談所に居たんだ。早く帰らないと。茂夫は改めてやる気になる。
「おいそこの緑色の不気味なやつ!今動いただろ!外野に行け!」
直後にエクボが退場になり、何しに来たの…?と茂夫の視線に責められた。

退場を命じられたエクボが鬼役と一悶着したあと、ゲームが再開した。応援マスコットに成り下がったエクボを後目に茂夫はゲームに集中し、じわりじわりと距離を縮めていく。
気付くとこの場にはもう茂夫と鬼役しか居なかった。
なのでより厳しい目が茂夫に向けられたが、茂夫はもともと大人しくするのは大得意だった。距離が縮まるにつれ鬼役に焦りが見え始める。
そしてついに、目の前まで来た。
(あ、これどうやって捕まえたら良いんだろう。)
相手を目の前にして、茂夫は困惑した。
やたらフェイントをしてくる鬼役を眺め、茂夫は考えた。そもそも今日はどこの部位なのか、まだ分かってなかった。目の前から気配はするが、特定できない。

「やべぇ!シゲオはやく捕まえろ!そろそろ起こされちまうぞ!!」
エクボの声にギョッとする。予約客が来る時間が迫っているとの事だった。だからこそエクボが急かしに来たのだ。それはもっと早くに言うべきだろうと茂夫は思ったが、今そんなことで時間を取る訳にはいかない。焦った茂夫は鬼役が背中を向けたのと同時に、その背中に飛び付いた。

パァン!と乾いた破裂音が響いた。音にビビって目を瞑っていた茂夫が瞼を開けると、腕の中には霊幻の胴体があった。そして頭上では自分の首根っこを掴んだエクボが大急ぎで帰り道へと向かっているのを見た。
「シゲオ、ソレ離すなよ!全部無駄になっちまうからな!」
とエクボに言われ、改めて霊幻の胴体を強く抱き締めた。
霊幻の体をこんなにきつく抱き締めた事など無かった茂夫は、奇妙な気分で瞼を閉じた。


「モブ?起きたのか?」
意識が戻ると瞼に何かひんやりした物が乗っていた。声で霊幻が側に居ると分かる。そして直後、手から何かが離れた。
(手を握られてた…?)
目元に置かれていた濡れタオルを外し、体を起こす。茂夫はお祓い用(マッサージ用)の寝台に寝ていた。
「急に倒れるからびっくりしたぞ。救急車呼ぼうとしたらエクボが止めるし。」
お前また何か変なのに絡まれてるのか?と心配する霊幻を眺める。
湯飲みに入ったお茶を渡され、お礼を言って飲んだ。温かさが心にじんわりと沁みる。
「気分は?」
「大丈夫です。」
「そうか。とりあえずそれ飲んだら今日はもう帰っていいぞ。」
「え……でも。」
予約客がいるのでは。と霊幻を見れば、なんとかなるだろ。と苦笑した。
「最悪エクボがいるしな。だからアイツ置いてってくれ。」
と言われ何故かチクリと痛みを感じたが、茂夫はその痛みを理解できず、了承した。
しかしエクボは『緑色の不気味なやつ』発言を忘れておらず、霊幻にキッパリ「嫌だ。」と断って帰った。




(4日目おわり)

胴体にしちゃったからパーツいっこ足らなくなった。(最初、胸(上半身?)と腰(下半身?)で分けてた)
どうしよう。

師匠が手を握ってくれてたのはモブがえらく魘されてたからですって入れ忘れましたすみません。
握ったらモブがちょっと楽になっちゃったから離せなかったんですよ。てのを入れたかった……

そして見切り発車でついに設定の縛りが破綻しました。


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