「お前誕生日いつなの」
切原が、日吉の背中に声をかけた。ベッドに寝転がってゲームをする切原とベッドにもたれて本を読む日吉の間にさっきまで会話はなかったというのに、思考回路の読めない此奴の口から唐突の質問が出ることは常で日吉は何も訝らずに答えた。
「12月5日」
ベッドに浅くもたれる日吉の姿は切原からは頭しか見えず、「ふうん」と切原が呟いたその後には一瞬の間が生まれた。そして日吉はそういえばとでも言うように同じように切原に尋ねた。
「お前は」
「9月25」
日吉は本を置いてベッドに腕を乗せて振り向いたが、切原の目線はゲーム画面のままだ。尋ねるときにちらりと日吉の方に目をやったが背を向けていた日吉が気付くわけもない。素っ気ない切原の答えにへえと思いつつ日吉は考えた。
「…今日?」
あまりに主張がなかったから日吉は気付くのに遅れたのだ。9月25日は紛れもなく今日この日だった。知らなかったのだからもちろん何かを用意しているはずがない。
「今日だよ」
「何で言わないんだよ」
「きかれなかったから?」
何事もないかのように振る舞う切原の顔がどんどん弛んでいく。まるでこの状況を楽しんでいるようだった。ゲームを枕元に置いて今度こそ日吉と目を合わす。誕生日を教えていなかったのだから祝ってくれないことを非難したりなんかはしない。そういうやりとりは二人の間にはない。代わりに遊び心で溢れている。
「なんか欲しいもんとかあんの」
はあ、と大きな溜め息をついて日吉が言った。すっかり切原の方に向き直っている日吉はベッドに頬杖をついている。よっと起き上がった切原を見上げると、切原が噴き出して言った。
「…お前今めっちゃ面白い顔してんぞ」
どんな顔をすればいいのかわからなかった。日吉の面に浮かぶのは、仮にも恋人である奴の誕生日を当日に知らされてしかも向こうは遊び心で挑んでくるというなんとも言葉では言い難い色。
「心境が複雑なもんで」
そう言うしかなかった。また溜め息をつく。そんな日吉に切原は、せっかく俺といんのにわざわざ幸せ逃がすようなことすんなよとまた笑う。ああ切原は、欲しいものを尋ねられていたのだった。だったらと、す、と小さく息を吸ってから思いの丈を吐き出した。
「俺の知らないお前を全部ください」
そう言った顔が言葉が態度が全てが愛おしく感じた。こんなの愛の告白じゃないか。日吉は起き上がって間もない切原にかばっと抱きついて勢いのままに元の位置に押し倒す。押し倒したからと言ってそういう雰囲気になるわけでもなく、何すんだよとくっくと笑う切原と別にと言って同じように笑う日吉がいる。狭いベッドに2人で寝転んで下肢をぱたぱたさせながら言葉遊びをする。幸せ以外の何でもなかった。
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赤也誕生日2011
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