級友と一緒にいる恋人の姿を見て妬く時期なんてもう過ぎた。いつも二人でいたい、誰にも邪魔されたくない、独り占めしたいなんてそういうのは恋の始めにすることだ。


だって自身の友に混じって戯れる喜八郎はとても可愛い。

平にはすごく心を開いているみたいだし、田村とはよく話す。斉藤は後からやってきたにも関わらず人望からなのか喜八郎にとても懐かれているようだ。

普段は無表情で飄々としてる喜八郎が友人と過ごしているときは表情が結構変わるのだと知ったときはまだ俺は嫉妬をするくらい喜八郎しか見ていなかった。
だけど周りも見えるようになった今ではその友人ごと愛してやろうなんて恥ずかしいことを思っている自分がいる。



まあこれは前置きで、ただの長い言い訳。自分を怪しい目で見られたときの逃げ道なわけ。


「喜八郎ってさ、泣くの?」

誰だってこんな質問をされれば相手を訝るだろう。
だから俺はこんな長い言い訳を用意して懐に忍ばせているのだ。
だからさ、その表情を独り占めしたいとかじゃなくて、ちょっとした俺の好奇心として聞いてほしい。

「そんな簡単には泣きませんよ」

喜八郎は俺の突然のおかしな質問に首を傾げることもなく、さらっと答えた。
そんな簡単には、ということは俺が泣かせてもいいのか。そういう挑戦状?宣戦布告ともとれるそれは、だけど、と言葉を続ける喜八郎によって違った意味なのだと知らされる。

「先輩が死んだら泣いちゃうかも」

嗚呼全く君はそんなことを言うものだから、俺はわかりやすくずっとそばにいてほしいと言われたように捉えてしまう。
言葉足らずの君は、俺を図らずとも幸せにする。


だから、まだ知らない君の泣き顔も、今はもう少しおあずけでもいいかななんて。


(死なないさ、君の泣き顔を見るまでは)

(知らない君のそんなかお、見るのは遠い未来でありますように)



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綾竹綾企画「盲目」様に提出させていただきました。



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