竹谷先輩、あなたは今どこで何をしているのでしょうか。どこかで生きていますか?もうきっと会う確率など無いに等しいのでしょうが、僕はあなたが生きていることをただ祈ります。だって命はこんなにも儚くもろいのだから。


「せんぱい、」
時の流れは非情にも早く、別れの時はあっと言う間に訪れる。
孫兵は、この春からもう最上級生だ。何年もこの学園で過ごしているはずなのに、入学した日のことをいまだに覚えている。そして最愛の先輩と出会い、別れてから丸一年が過ぎた。
去年の春、悲しい別れをしたばかりだというのに、また別れは突然にやってくる。

すがる思いで声を出しても返事が返ってくるわけはない。

「ジュンコ…」
何よりも大切な家族が死んだのだ。寿命だろう。動物の寿命など人間とは比べものにならないほど短い。今までたくさんの生き物との別れを体験してきたけれど、一向に慣れることはない。
生き物小屋の近くにはたくさんの墓がある。ジュンコはもうその下だ。孫兵の清らかな涙が滴となって降り注ぐ。

「竹谷先輩は何をしているんでしょうね」

後ろから突然聞こえた声に孫兵は振り返る。
「孫次郎…」

生き物が死んだとき、墓を作るとき、いつもそばにいてくれたのが竹谷だった。その竹谷はもういなくて、それなのに今まででもっとも辛い別れが孫兵に降りかかっているのだ。

「伊賀崎先輩が泣いてるのに隣にいないなんて、駄目なお人ですね」

孫次郎はそう言って孫兵の隣にしゃがみこむ。
孫次郎はまるで竹谷がいつも孫兵の隣にいたことを知っているかのように言った。
実際に見てきたのだろう。自分が行きたくても行けない場所をいつも決まった人物が陣取っていたことを、つらいほど見てきた。そしてやっと自分が欲しかった位置を手に入れたのだ。弱みにつけ込むことだって時には大切だ。

孫兵は横目で孫次郎を覗くと、孫次郎はジュンコの墓に目を閉じて手を合わせていた。
「仕方がないので、竹谷先輩の代わりに僕が隣にいてあげます」
なので、先輩は思う存分悲しんでください。
孫次郎は、自分に弱みを見せてくれればいいと思った。例え自分が孫兵が今でも想っている人の代わりだとしても、それでも構わないと思っていた。

「ははっ、孫次郎は竹谷先輩よりずっと頼もしいね」
孫兵は一瞬だけ顔に笑みを浮かべた後、また視線を墓に移して涙をこぼした。

自分があの人よりも頼もしいだなんて、とんだ世辞だと思う。
人の弱みにつけ込むなんて自分も大概なものだ。こうでもしないとこの人は自分を見てくれはしない。いつだってそうだった。

その涙は地面に吸い込まれジュンコのもとに届くだろう。

(嗚呼、その水を僕が掬ってやることができたなら)


―――――
視点がわかりづらいですよね。孫兵目線で始まり、孫次郎目線で終わるという。
竹孫←孫次郎です。ただし竹孫は竹谷の卒業により破局済み。
このあと孫孫に発展するかは孫次郎の頑張り次第。どっちが攻めでもおいしい。



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