私は飄々としてて、心なんて人の半分の大きさしか持っていなくて、冷めてて、まあとりあえずそんな感じの人間だと思われているらしい。いや、そういえば人間とも思われていなかったのだ。誰かさんは私を狐じゃなかったかと言った。馬鹿馬鹿しい。ただ他人に何と思われようが私には関係ないのだ。他人の目など気にしていればもうとっくに生きてなぞいられないだろう。まったく、馬鹿馬鹿しいもの。
他人の目を気にしなくたって案外生きていけるものだが、それでも自分の中の自分というものはそれなりに良いものでありたい。他人にどう見られてもいいのに自分では良くありたいなんて、これなんて自己満足の世界なのか。
ただこんな私でもたまには凹むときだってあるものだ。今まさにそれで、正直誰とも顔を合わせたくないのだが、とてつもなく人肌が恋しい。こういうのを矛盾というのだ。
頭の中でぐるぐる考えて、ああ本当に私はここにいて良いのかとか、自分の顔も持たずに生きる意味などあるのかとか、よく考えれば私の人生間違いばかりじゃなかったのかとか、
「たった14年しか生きてない人間が、何が私の人生だよ」
座っているその身に対して、寝転んでその腰に抱きついている三郎の頭を撫でながら伊作は言った。
「間違いばかりって何が?」
その包容力といえば親を彷彿させるもので(年齢も一つしか変わらないのにこの人といったらまったく、)まるで小さな子供をあやすような口調だ。
第一、人に会いたくないのにこうしてこの人の温かさを求めている時点で伊作は三郎にとってかけがえのない存在なのだ。恋人とはまた違う、安らぎの場所。
「だって確かにまだ14だけど、もう人だって殺したし…」
今回こそ本気で弱気になっているのか、語尾が殆ど聞こえない。三郎は相も変わらず伊作の腰に腕を回し、先ほどよりもさらに体を丸めて小さくなっている。
「伊作先輩は人とか殺したことないんでしょ」
本当に耳をすませていないと聞こえないような声でかすかに呟く。
「先輩の手は人を救うためにあるものだもんね」
伊作は返答に困った。忍を目指すものの手は人を殺める筈なのに、この子は自分の手は人を救うと言う。実際そうであればいいと思っている自分までもがここにある。
伊作は小さく首を振る。自分のことで悩んでる場合ではないのだ。心配すべきは今腰にまとわりついている三郎のことだ(本当は自分のことなどとうに割り切った)。
「良いことを教えてあげる」
一瞬の沈黙を破るように伊作が言った。その口調はどこまでも穏やかだ。
「間違いは過ちとは違うんだよ」
相変わらず腹のあたりにある金茶色の頭を撫でながら言う。三郎は「え?」と少しだけ顔をあげた。
「痛みとか喜びとかね、そんなのは全部生きてる意味なんだ」
「うん」
「だからもっと楽に生きていこうよ」
三郎はもう一度うんと頷いた。
「ありがとう伊作先輩」
そう言った三郎はまた腰に回す腕をきつくしたが、腰から伝わる三郎の体温はさっきよりも上がったようだった。
この調子だとまた数刻後にはいつものように戻るのだろう。
(願わくは、この子に幸あれと)
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間違いは〜と痛みとか喜びのくだりはとある大好きな曲の歌詞より。超伊鉢ソング。
伊鉢は決してかけ算じゃなくて、足し算。親子的な。伊作に甘える鉢屋とか可愛いと思う。だってこの伊作、三郎のことをこの子とか言ってるし、三郎は伊作に敬語使ってないし。ただ普段は二割くらいは敬語まじってればいいです
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