※ユーリが変態です。
※フレンもすぐに変態の仲間入りします。
※ユリフレ→フレユリな流れです。
※写真は、凍りイチゴに練乳をかけたものです。
(先日大学メンバーで飲んだ時に出たデザートです(笑)


*********

 

コンコンコン。


規則正しい音にユーリはドアに視線を向けた。
自身は、というとベッドに寝転び
誘われるまま眠りにつくか、つかないかと
ぼんやり時を過ごしていた。


体を起こし、ドアへと向かう。
狭い知り尽くした己の部屋。ドアへは数歩の距離。
ふと相手がだれかを考える。
夕飯時を過ぎて、辺りは寝静まり、遠くで
飲み屋の騒がしい声が聞えるか聞えないかの時間。

こんな夜に来る相手を
ユーリは一人しか想像できなかった。

すると、その想像を肯定するかのように
ドアの向こうから声が聞えた。

「ユーリ、僕だ。」

ユーリは内心やっぱりなと呟きながら
ドアを開けた。

「どうしたんだ?フレン。こんな時間に。」

そこには想像していた金髪の幼馴染、兼
恋人の姿があった。
お互い同性だが、『そういう付き合い』になって
もう2年は経っただろうか。
だから、ユーリにとって
どんな理由であれ、嬉しい来客に変わりなかった。

「休暇をもらったんだ。1日だけど。」

そう言って、微笑む男 フレンは
どこぞの国の王子そのもので、うっかりその輝きに
圧倒されそうになりながらユーリは何食わぬ顔で
笑みを浮かべた。

「そっか。ま、入れよ。」

「ああ、ありがとう。」

恋人を迎え入れ、定位置ともいえるベッドに腰掛けると
ユーリはフレンを見た。
フレンはというと、椅子代わりの木箱の上に腰掛けたところだった。

その木箱は、フレンが持ち込んだものだ。
2人でベッドに座って話をすると
どうも雰囲気というか、空気が、いけない方向へ行ってしまうためだ。
若さゆえ、それも有りなのだろうが、
出会うたびにそれでは、体が持たないと判断した結果だった。

ゆえに、木箱の上はフレンの定位置というのが最近だ。
まぁ、それにお互い納得しつつ、時にささやかな不満を感じる時がお互いあったりするのだが。

そんな木箱の話は置いておいて、
ユーリの正面に座る形でフレンは手にしていた紙袋の中身を取り出し始めた。


「土産か?」

「ああ、いいものが手に入ったんだ。」

そう言って、フレンが取りだしたのは
手のひらサイズのチューブだった。
牛の絵が描かれたパッケージのそれに、ユーリは笑った。

「練乳、ってお前またエロいもん持ってきたな。」

「……君は、どうしてまともに物事を受け入れないんだ。」

「だって、エロいもん。」

ユーリの言葉にフレンは深いため息をついた。

「別の街でアイテムの補充をしていて見つけたんだ。
小さい頃、君がすごく気に入ってたのを思い出してね。」

フレンは苦笑しながら再びあきれた。

「純粋に懐かしんで喜んでくれるという僕の期待を君はどうして……」

「ああ、悪かった、悪かったって。」

帝都ザーフィアスおよび下町には、特殊な食材がなかったりする。
昔、旅から戻った下町の青年がお土産にと買ってきたのが練乳だった。
ちょうど真夏だったこともあり、フレンとユーリ、下町の子供達に
練乳のカキ氷がふるまわれた。
甘い物がなかなか手に入らない下町で、それはそれは
思い出深いものだった。

特にユーリは甘い物が大好きだから。

純粋なフレンの気持ちは、ユーリの一言で台無しになったのだった。


「冬にカキ氷はできないから、イチゴも用意したのに。
君は……。」

そう言って、続けて紙袋から出てきたのは
小さなカゴ皿に赤々と大きな粒をしたイチゴたち。
収穫時期でなければ、高額なそれにはめったと手が出せない。

ユーリは思わず、『おお』と目を丸くした。


めずらしさに、思わずユーリの手が出たが
フレンがあっさりとイチゴを遠ざける。


「ユーリ、まだ話は終わってない。」

「じゃ、それ食いながら話ししようぜ?」

意地悪く笑うユーリにフレンはムッと眉間にシワを寄せる。


「ユーリ。」

低めの声で呼ぶも、ユーリはニヤニヤとフレンを見つめ返すばかりで
反省の色はない。


フレンは再びため息をついた。

いつもユーリはこうなのだ。
口で彼には勝てない。というか、仕方がないと言うべきか。


フレンは黙り込んで視線を落とした。
膝の上にあるイチゴは赤々と艶めいている。

どうしてうまくいかないのか。
ただ、普通にイチゴを一緒に食べるだけなのに。

 

そこまでになって、ユーリはやっと状況を理解した。
『また、やってしまった。』
と内心で零しても、もう遅い。

行くところまで関係が行ってしまってから、お互いさらに
素直になったというか、特にユーリは
フレンの苦手とする『そういう』話をするようになった。

真面目なヤツほど、そういう話が好きで、
でも真っ赤になって否定しては、
羞恥にわたわたとしている姿はおもしろく、
愛おしいものがあるからだ。

フレンも一応男でそういう話題についていけなくもないが
露骨な表現はやはり遠ざけがちで、
そういう雰囲気でなければ、なかなかその話題には乗らない。
けども、ユーリとそういう関係になってからは
ある程度許容範囲も広がってはいたのだが、
さすがに、日常とそれの区別がつかないのは
気に障ったのだろう。


「あー……フレン。…………悪かったからさ、俺準備するから。」

立ち上がりフレンの顔を下から覗き込みながらユーリが弱々しく声をかける。
フレンは視線を合わせようとはしない。

共に騎士となり、そして、自分が辞めたのは半年前。
自分よりも長く騎士として身を置いているはずなのに。
幼い頃の記憶を辿ってもこんな調子のフレンは覚えがない。

そう、付き合うようになってから判明した
フレンだった。

ユーリは小さく愛おしく微笑むと
フレンの頭をよしよしと撫でた。


「俺のために買ってきてくれたんだろ?
一緒に食おうぜ。な?」

その言葉にフレンは 視線を逸らしたまま
ユーリに向けてイチゴのカゴ皿を差し出した。

「よし、まってろ。洗ってヘタ取るから。」

ユーリはそれを受け取り気合を入れて立ち上がる。

「別に、ヘタまで……」

「食べやすいだろ?その方が。」

狭い部屋、台所はすぐ傍だ。
台所に立つユーリの背に声をかけるも、
やると言ったら聞かない恋人は、自分を置いて
もうイチゴとにらめっこだ。

否、それがユーリ流の気遣いだということを
フレンは知っていた。
心にもない甘い言葉をユーリは言わない。
ただ、謝る時には謝って、
してやれることはしてやると言った態度。
本当は謝る気も許しを得る気もないのではないかと
思えるが、本当は困りきっているのだ。


イチゴを食べようとなった時にまだ
自分が拗ねていたら、ユーリはきっと
自分の機嫌が直るまでイチゴには手を出さないし、
見向きもせず、自分をかまってくれるだろう。

証拠に。

面倒くさがりのユーリがちまちまとイチゴのヘタを取るなんて
おかしな行動じゃないか。
最善の気を利かせているつもりなんだ。

それに。


「ヘタ取ると美味しくなくなるんじゃないか?」

フレンはある確信をもって言葉をかけた。

「練乳かけて美味くするんだろ?
……いや、取るなって言うならやめるぞ?」

ユーリはフレンの言葉に一瞬考えて
フレンの意に沿おうとした。


ユーリらしくない発言だ。


とフレンは内心で笑いながら
心が満たされるのを感じた。

自分の気持ちを最優先にしようとする言葉が返ってくると
確信していたフレンはユーリの言葉に満足していた。
同時に、さっきまで拗ねていた自分はどこへやら。


「そうだね。君がやりやすい方でいいよ。」

声色が明るくなったフレンに
ユーリは振り返り様子を伺った。
フレンは小さく笑った。

それを確認して、安心したようにユーリが笑った。


「じゃ、フレンの分だけな。8個だから4つずつな。」

「君のために買ってきたのに。」

「半分個だろ?」

「そうだね。」


穏やかな時間が流れる。
昔から変わらない空気。
そして、昔よりも甘さが増した空気。

互いにそれを感じていた。

 

 

しばらくすると、
皿にゴロゴロと洗ったイチゴを乗せ
ユーリは今度は床に座った。
それを見たフレンは、すぐさま自分も床に座り
ユーリの隣に座った。

「じゃ、食おうぜ。」

見事に、ヘタがあるものとないものが並ぶ皿に
フレンは小さく笑いながら「ああ」と返事をすると
練乳のチューブの蓋をあけた。

「適当にかけていいかい?」

「ああ、足りなかったら足せばいいしな。」

とろりとした練乳が赤々としたイチゴに降りかかり
赤と白のしま模様が出来上がる。

「美味そう。いただきます。」

「召し上がれ。」

フレンのはにかんだような声を聞きながら
ひょい、と一粒摘み、ユーリは嬉しそうに口にイチゴを運んだ。


「ん、あまぇ。」

「冷えてないけど、美味しいかい?」

そう言ってフレンもイチゴを摘み口に運ぶ。
もちろん、ユーリが気を利かせたヘタなしのイチゴを。

「ん、イチゴ自体はそんなに甘くなかったね。」

「だから、練乳かけるんだろ?美味いって。」

「そっか、ならよかった。」


もぐもぐと、あっという間にイチゴは2人の胃袋に納まる。


「もう少し買ってくればよかったな。」

そう零すフレンにユーリは笑った。

「十分だって。デザートってこんなもんだ。」

「ユーリは大量の方がいいんじゃないか?」

「大人一人で大量に甘いもんって、ガキんチョに笑われるだろ。」

「はは、そうだね。」


ガキんチョ、とはもちろん下町の子供達のことで
ユーリは暇を持て余すと有り合わせでデザートを振舞ったりしている。
量こそ少ないが、めったとない甘い味に子供達は喜んで受けれる。
が、男であるユーリの手からこんなにも美味しく、しかも
甘いものが生まれてくるなんて、と甘党をからかわれたりしているようだ。


ふと、フレンは右手がべたべたとしている事に気づき
立ち上がった。

「さすがに手で食べたらこうなってしまうな。」

ユーリはというと、指についた練乳をペロペロと
親指、人差し指と舐めていたが
自身の唾液で逆にべた付いた指を見て『俺も洗う』と苦笑した。

 

手を洗い、2人は再び定位置に座った。


「これ、俺にくれんの?」

練乳のチューブを手にベッドに座ったユーリは
フレンを見た。

「ああ。カキ氷やイチゴ以外にも、ホットケーキとか
コーヒーとか、いろいろ使えるみたいだから。
冬の今なら、保存もしやすいだろうし。」

開封後はなるべく温度の低いところで保存。
だが、下町にそんな保存が可能な魔導器はない。

フレンの言葉に、パッケージの裏面に書いてある
使用方法に目を走らせ、ユーリは感心した。

「ホントだな。『ぬって、かけて、いれる』練乳って……。」

 


※ユーリ・ローウェルが見た練乳のパッケージ裏面。


ぬって:パン、ふかしたサツマイモ、ホットケーキ

かけて:カキ氷、コーヒーゼリー、フルーツ

いれて:コーヒー、紅茶などの飲み物に


練乳の使い方いろいろ☆楽しく美味しくお召し上がりください

 


瞬間、年頃の男2人の脳裏に
その三つの単語だけが響いた。

『ぬって、かけて、いれて』

分かりやすくユーリ・ローウェルの脳みそを展開すると

『(フレンに)塗って、(フレンに)かけて、(フレンに)挿れて』

の三拍子に早代わりしたのだった。

 

2人の間に何とも言えない空気が漂う。

 

普段生活していても、この単語3つが並ぶことはあまりない。
ゆえに、ユーリの低い声で紡がれたそれは
なんとも言えないエロスを無意識と漂わせたのだった。

 

フレンはゆっくりと立ち上がった。


「……ユーリ……。」

ゴゴゴゴゴ、と音を立てているかのようなオーラを纏ったフレンに
ユーリは思わず叫ぶ。

「違う!!わざとじゃない!!俺は本当にパッケージを読んだだけだって!!」

「君は……」

「だーっ!!話し聞けって」

ユーリの目の前に立つとフレンはユーリの手にある
練乳のチューブを取り上げようとそれを掴んだ。


「……君にそれを渡すとよからぬことが起きそうだから、返してもらう。」

「誤解だ!!つーか、今更取り返すな!明日からの俺の楽しみを奪うか、お前!!」

誤解が生まれる直前まで、ユーリの頭には
しばらく、甘いトーストが毎朝食べられる幸せを予想していたのだ。

それを説明して、取り上げられることだけは避けよう
そんな瞬間だった。

ユーリは力任せにぐいっと、チューブをひっぱってしまい、
瞬間、チューブのキャップを握る形となったフレンの手によって
練乳のチューブは再び開封され、
そして、勢いよく握っていたユーリの手によって
その中身を見事にぶちまける結果になったのだった。


ほぼ満タンに入っていた練乳は、見事に
フレンの顔、ユーリの胸の上、および服の上に落ちた。
飛び散り方からして、シーツも汚れているだろう。


とりあえず、2人は、
呆然とその飛び散った液体に驚いていた。

勢いよく音を立てて飛び出してきた液体
もとい、練乳。
甘い匂いが二人の鼻を刺激する。

そうしてようやく、意識を取り戻したユーリは
とりあえず、フレンの手からキャップを受け取り
まだ中身が残っているチューブに蓋をして、それを
机の上に放り投げた。

フレンはというと、ぼんやりと立ち尽くして
顔についた練乳を手で撫でていた。
そして、ハッとユーリを見下ろすなり意識を取り戻した。

「ご、ごめん。こんな汚すようなつもりじゃなかったんだ。」

フレンはとりあえず汚れたユーリの服やシーツを見てオロオロと謝罪した。

「洗えばすぐに落ちるとは思うけど、お湯の方がいいかもしれない。
このままだと固まって、こびりついてしま……」


黙り込んでいるユーリに視線を向けて、
ようやくフレンは気が付いた。
自分を見るユーリの目が変わっている事に。

フレンは思わず息を飲む。
まっすぐに自分を見るユーリの目は情欲を匂わせていた。


「……エロいな。」

無音のなか、ユーリの呟きは酷く響いた。
しかも、どこか妖しげな雰囲気を帯びたその声に
フレンはハッと意識を取り戻した。

「ユーリ、あっ」

ぐいと、腕をひかれフレンはユーリの上にうつぶせた。
どうにか腕で体をささえ、全体重をユーリにぶつけることは
なかったけれど、逃げられないことに変わりはなかった。


「……とろとろ、だな。」

フレンの腕を掴んでいた手で、ユーリがそろりと
練乳のかかったフレンの頬を撫でる。
その一方で、足をからめ、立ち上がれないように
逃げられないようにフレンを拘束する。

「糸引くし、エロいな。」

「ユーリっ……」

自分の頬についた練乳で糸を引いて遊んでいるユーリは
酷く色っぽくかつ、獲物を見定める獣のようで
フレンの背にゾクゾクとしたものが走った。

思わずフレンが視線を逸らした瞬間
ぺろりと頬を熱がなぞった。

生々しい感触に想像できるものは一つしかなかった。

「っつ!!///」

「苦くないから、いいかもな。」

そう言って、ゆっくりと、ぴちゃり、ぴちゃりと
下から上へとフレンの頬をユーリの舌がなぞった。
猫が毛づくろいをするそれと似ているが
明きからに意味合いは違っていた。

「っ、ユーリ、ぁっ///」

「甘めぇ……舌がピリピリする。」

練乳、牛乳と砂糖でできたそれとはいえ、
砂糖の塊と言ってもいいそれは、直接舐めていると喉が渇くほどだ。

それでもユーリは、舐めることをやめなかった。


ほぼ、綺麗に舐め取ると
こんどは自分の手についていた練乳を見せ付けるように舐め取っていった。

その舌使いといい、音といい、ユーリの表情といい、

フレンは脳みそがぐらぐらとして、心臓が今にも爆発しそうな自分を感じた。

 

「思うんだけどさ。」


指を舐め終えたユーリは意地悪く笑いながらフレンに顔を寄せた。


「俺、一言もエロいこと考えてなかったのに
こんなことになったのって、お前が原因だよな?」

コツンと互いの額がぶつかる。
ユーリの両手がフレンの頬を包む。

フレンは視線を逸らすことができずユーリを見ていた。


「『……君にそれを渡すとよからぬことが起きそうだから』って
お前、エロいこと考えすぎだろ。」


たった三つの単語。それだけで。


フレンの頬がカッと赤く染まり熱を放つ。
それを見て笑みを深めながらユーリは続けた。


「ザーメンに似てるよな。くっちゃぐちゃの
ねっちゃねちゃに……な?フレン。」


耳元に唇を寄せられ、熱い吐息を感じフレンはきゅっと目を瞑った。


フレンの緊張具合からそれを感じ取りながら、ぼそり、とユーリは呟いた。

 


「当たってんだけど?」