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← ・ 
清風

 見渡す限り背丈の低い草が生え、風に吹かれた姿は青々とした海原の波のよう。
 大草海を超えて来た風はさわさわと、心地好く我が耳を頬をと撫ぜて行く。
 立夏の頃の空を見上げれば、よく肥えた雲が元気良く流れ去る。
 草原に寝転んだ旅人はぼんやり空を眺めた。

 遠き彼方ではこの天を、剣劇や陣太鼓の音が突き、赤き炎が嘗めている。
 それが嘘のようにこの辺りは静かだ。
 全てを忘れ、この海原に消えてしまいたいと思う事がある。
 この心地好い風がそう思わせるのか、この心地好い草の囁きがそう思わせるのか。
 旅人は瞳を閉じ、深く呼吸した。



――――――
とりあえず、草原が書きたかっただけ。
左右見渡す限りの草原と、真っ直ぐ前へ伸びる街道。そこに吹く風……。
何か爽やかな風景が浮かんだ。

話題:SS
……。
ショートストーリーって程じゃないね(^^;)
  
 10/12/08 17:31 SS・一.0

人ならざるものの円舞曲

 生臭い風が吹く。
 そこは右も、左も、暗闇の中をはいずり回る命亡き物で溢れ返っていた。
 つい先程まで顔見知りだった物の顔も見えるが、それはもはや人ではない。

 何処からともなく沸き上がってきた屍の群れは、瞬く間に小さな村を飲み込んだ。
 黒く滲み出たそれは、形を無くすまで壊さねば、再び動き出す。
 自警団など役に立つわけも無く、武器を握ったまま屍の仲間入りをしていた。


 一刻前までは村だった場所の中央には教会が建っている。
 その尖塔で、唯一となった命ある者が剣を振るっていた。
 見た目からは外套を着込んでいる為男女の区別は付かないが、小柄で、子供のようにも見える。
 手にしている剣にはどす黒い血糊がべっとりと付き、もはや『切る』とは言えず『叩き潰す』為の武器となっていた。
 四肢を狙って破壊する。だが、それでも機能は停止しない。

「そろそろ、潮時かな……」

 ぽつりと呟いた言葉は、白南風に乗って消えた。

「まだ、生きている人間がいるとは驚きですね……」

 闇に、ぞっと背筋が凍り付く程冷たく、低い声が響く。
 すると、今まで犇めいていた屍の群れがさっと道を空けた。

「成る程。お前がこの軍団の親玉か」

 凛とした口調で紡がれた言の葉は、幾分かの余裕が感じられる。
 声からすれば、女のようだ。

「親玉と言われればそうかも知れませんね。それより、貴女は何者ですか。そんななまくら刀一本で生き残るとは」

 カツっと石畳の廊下に靴音が響く。
 一歩、一歩と歩む足音は次第に近付き、ついにその主を明かりの下へと晒し出す。
 黒い闇に紛れる服装。同じような黒い艶やかな髪は後ろに撫で付けられている。
 そして双眼は鋭く紅に輝いていた。

「こんな輩にやられる私じゃない。さっさと決着付けようじゃないの……」

 言いながら女は剣の血をを服の裾で拭う。

「せっかちな方だ。……ま、嫌いではないが」

 ふっと男は口元を歪め、剣を抜く。
 月の光りに、二人の剣が煌めいた。
 その姿はあたかも、円舞曲を踊るか如く。


―――――――――
久々SS
結局普通の人が丸っきり出てない。

……。
つい、書き終えるとすぐに上げちゃいたくなる……病だな。うん。


本日、拍手を頂きました。
ありがとうございます(^^)
  
 10/12/04 22:26 SS・一.0

寒月

 寒月が冷ややかに闇夜を照らし出す中、露台に小さな足音が谺する。
 足音の正体は風に長い濡れ羽色の髪を靡かせる、小柄な女だった。
 煌々と輝く月に照らされた肌は透けるように白く、あたかも降り積もったばかりの雪原のようである。
 寒風が吹き抜けた。
 その寒風に揺れる牡丹のような、可憐な唇がそっと動くが、言葉は紡がれない。

「志暉(シキ)、このような場所に居ては、体を壊すぞ」

 露台の入口から、背の高い男が覗き込み、女に声を掛けた。
 名前を呼ばれた女は、はたと足を止める。

「主公……明日、再び御出陣なさるそうですね」

 女は振り返る事なく、再び唇を動かす。
 発せられた声は、存外低めの声だった。
 男から返答は無い。が、重い足音が響く。
 足音と同時に金属の擦れる音も耳に入る。佩剣しているようだ。
 女は一瞬身を強張らせ、黒い瞳を閉じた。

「苦労をかける」

 小さく耳元で呟く。
 その吐息は微かに酒の匂いがする。
 手が肩に触れたと思えば、すぐさま離れ、肩には着物が残された。
 女は、そっと男の手が置かれた肩に手を添え、俯いた。

「お帰りを、お待ち申し上げております……」

 振り返らずに声を発するが、声が震えた。

「何か、あったのか」

 すっと、大きな気配が脇を通り過ぎた。その気配の袖を、女はヒッシと捕まえる。
 すると男は困惑した顔で女を見下ろした。

「嫌な……嫌な夢を見ました……」

「夢……か」

 男は弱々しく袖を掴む女の手を、両手で握り締めた。

「安心しろ。私は生きて帰ってくる――」

 ……。
 そうじゃない。
 そうじゃない、と女は心中で反論しつも、口に出す事は無かった。



――――――――
文章(万年)リハビリ中。
書きたい事書くのに、丸一日とか……ましてや全くまとまってない。
まだまだ駄目だなぁ(´`;)

昨日、拍手をもう一件頂きました。
ありがとうございます〜(^^)

話題:SS
  
 10/05/08 22:50 SS・一.0

魔女の領域

好きな曲で物語創作!

創作活動をしている方へのバトンです。
好きな曲のタイトルからイメージしたショートストーリーorイラストを書いてください。

・SSの場合は、歌詞に使われている言葉を文中にいくつか織り込んでください。
・一次、二次創作、NL、BLなど、なんでもOKです。

では、どうぞ!
…………………………………

♪タイトル…Cemeteries of London
♪アーティスト…COLDPLAY
・NEXTpage

歌のイメージ。
歌詞は一行だけ。
頑張った……。
続きが書けそうだが、今は無理。

本当はね、VIOLET HILLかVIVA La VIDAが良いんだけど、浮かばなかった。

Life in Technicolor iiVerはこちら



お疲れ様でした。
♪次に回す人…お持ち帰り自由で。
------------------
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mblg.tv
------------------

こっちのバトン回答でもあったりする。
続き  
 10/04/15 21:00 SS・一.2

見てはいけない物

 2000m級の険しき山々が一望する事の出来る高台に、とあるレストランがある。
 その店のテラスで長い黒髪を靡かせる女が一人、珈琲を一杯注文した。

 調度その日は観光客もおらず、暇を持て余していた店主が女に声をかけた。

「こんにちはお嬢さん。一人旅ですか?」

 女は美しい山並みから視線を店主へと向ける。
 その黒い瞳は、憂いが漂っていた。

「そう、一人旅。今、ずっと来たかった場所に来れて感動しているんです」

 店主は声をかけた事を怒っていると受け取り、少し頭を下げながら口を開く。

「お邪魔をして申し訳ありませんでした。よろしければお詫びに珈琲をもう一杯、ご馳走させて頂けますか?」

 女は一瞬困った顔を見せたが、軽く頷くと笑顔を見せた。
 白く透き通る肌は、山々を彩る雪化粧のそれと同等の白さ……否、それ以上の白さがある。
 真夏ではあるが、標高が高い所為で若干冷え込む。その為か、女は黒いストールを肩に掛けていた。
 ストールと髪の黒さは、肌の白さを一層際立たせる。

「珈琲をありがとう。私は邪魔されたなんて思っていないから、安心して下さいな」

 珈琲を受け取りつ、女は再び柔らかな笑顔を見せた。

「こんな片田舎にずっと来たかったとおっしゃるんですね。何か思い出でもあるのですか?」

「思い出なんて、私には無いわ。ただ……あの人にはあるの」

 女の視線は山々へ移り、店主からは寂しげな横顔が見える。
 その視線の先は実は山々ではなく、遥か空の彼方にあるのだと、店主は理解した。

「昔……いえ、大昔。ここであの人が撮った写真を見付けたの。だからいつか……来てみたかった」

 女が不意に鞄から取り出した写真を見るや否や、店主の顔色はみるみるうちに変わっていく。それを見た女は、にやりと微笑んだ。



――――――――――
顔色は真っ青に。
幽霊を見た感じ。
とにかく、見ちゃいけない物を見た感じ。


さっきのも、今回のも、イメージがあっても語れない。
ただ……バレそうな書き方になってるのは否めないかな。
これも執筆30分くらい。
いつもこんだけ早ければ……(涙)

話題:SS
  
 10/01/17 21:00 SS・一.2

地下室

 コンクリートの壁、コンクリートの床。
 暗く、陰欝な地下室に、時々地震の揺れが響き渡り、埃が舞う。
 否、それは地震ではなく、人為的な揺れである。度重なる空爆で地上は荒れ果て、瓦礫の山となっているで事あろう。

 ――ここは戦場だ。



「北方部隊との連絡は取れたか? 西方はどうだ?」

 背が高い将校が声を上げた。
 歳はまだ若いが、苦労しているようで、黒い髪にはちらほらと白い物が多く見受けられる。

「どちらも音沙汰がありません……もはや戦線は破られた物と見られます」

 首都防衛を一挙に任せられていた若い将校は、ガクっと肩を落とし、椅子に座り込んだ。
 思い付く限りの手は打ったはずだった。
 だが、それも全て後手に回ってしまったと言う事なのか……。

「……そうか。閣下に報告を。私は暫く一人で今後を考えたい。誰も通さないように伝えてくれ」

 部下の青年は敬礼した後、部屋を後にする。
 再び、地下が揺れた。


 ずん、ずん……。
 遠くに爆弾が落ちたらしい。
 ずん、ずん……。
 だんだん近くなる。
 だが、前にも直撃された事があったが、今も無事生きている。

 揺れる度、天井から釣る下げられた裸電球がぱちぱちと点滅し、部屋の闇が浮かび上がる。
 暗いのは嫌いだ。
 見たくない物が見えてしまう。
 若い将校は瞳を閉じた。

「アディ。ほら、目を開けて――」

 誰も部屋に入れるなと言ったのに、女の声がする。
 その声は懐かしく、だが忘れてしまいたい存在の物だ。

「その名で呼ぶな」

 将校は手を大きく降るが、空を切る。

「私しか呼ばない名前。だから私は貴方をこう呼ぶの。アディ、もうじき私と会えるわ……」

 将校ははっと蒼い瞳を見開いた。
 だが、目に映ったのはコンクリートの天井と揺れる電球だけ。
 女の姿はそこには無かった。



――――――――――
な……何か書きたくなったから書いた。
勢いがなきゃ書けない。
勢いだけだとこんな結果になる。
切れ切れで、よく解らない文章になった事は反省している。
執筆時間小20分程度だからな……。

何かイメージが無いわけではない。
誰かイメージが無いわけではない。


話題:SS
  
 10/01/17 20:19 SS・一.0

白球

 カキン、と白球を打つバットの音が、夏空に谺する。
 少年達は高く上がったボールを見上げ、所々雑草の生えた河川敷のグラウンドを、所狭しと駆け出した。

「オーライ、オーライ……」

 後ろに下がりながら、まだ汚れ一つ無い紺色のユニフォームを着た少年が、グローブを天に掲げる。
 だが、追い掛ける対象だったボールは、刹那に消えた。

「……アレ? 落っこって来ないぜ?」

 手を下ろしながら少年は首を傾げた。
 高く、高く上がり過ぎたボールは、一行に帰ってこない。

「ドコ行った?」

「あの草ン中じゃねぇか?」

 少年達は各々散らばり、それぞれが行方が知れないボールを探し始めた。

「ねぇな」

「あぁ、ねぇな……」

 ふて腐れた一人が、近くにあった小石を蹴り飛ばすと、小石は綺麗な放物線を描いて川に落ちて行く。
 ぽちゃん。と、音がするはずだった。
 返って来た音は「がちゃん」と言う、予想だにしない音だった。

「イデっ!」

 妙に甲高い声が川の方から聞こえる。
 少年達は、恐る恐るにじり寄ってみた。

「オイ、おめぇら! 何てぇコトしてくれたんでぃ!」

 言いながら飛び出して来た黒い影の異様な姿に、少年達は一目散に逃げ出した――

−−−−

昨日、外で野球少年達がカキーンとボールを打ってる様を見ながら綴った。
良いね、野球(見ない+やらないけど)
あと、全くのフィクションです。ネタはリアルで思い付いたんだけど、河川敷とか近くに無いしね(^^;)
もう一つ、黒い影の正体は河童。
ボールの行方は……何処行ったんでしょうねぇ。
実は使い回しSS(__;)
  
 09/08/12 11:24 SS・一.0

In one's extreme moments

 窓の外を見遣れば、陰欝な黒い雲が今にも涙を零しそうになっている。
 鈍色の、重たそうな鎧を身に付けた壮年の男が一人、机に向かいながら空を見上げた。
 一つ、二つと瞬き、男は再び手元の書類へと視線を戻す。

「主上、北方の砦が陥落した模様です。じき、この都まで迫る勢いで……」

 バタンと大きな音が書斎に響く。
 男は入って来た兵を上目使いで一瞥すると、何もなかったように手にしていたペンを走らせた。

「どうせ守備していた者が寝返ったのだろう。だが、後々後悔する事になろう。この都で、彼奴らに引導を渡してくれるわ」

 そう言った後、兵を下がらせる。
 だが、心中は複雑な物があるようで、扉が閉まったのを耳で確認すると、不図ペンを止めた。

「あいつが裏切りとはな……儂はいつでも覚悟を決めておったが、そろそろ潮時か」

 ぽつりと呟いた言葉は、虚しく書斎に染み入った。

 兵を上げ、かれこれ十数年。
 乱世のこの時代、一時であれ国を持ち、天下を夢見た。
 だが、ただ一人の将が裏切った事を皮切りに全てが傾き、今や小さな領土一つにまで追い詰められている。
 抵抗は最期の時までするつもりだが、果たして、そこまで付き合ってくれるような酔狂な人間がいるとも思っていない。

 ふっと溜息を漏らした所に、今度はノックをした後、客人は足を踏み入れた。

「主上、珈琲をお持ち致しました。気分転換に如何ですか?」

「うむ……貰うとしよう」

 先程の兵とは明らかに対応が違い、今回の客人に対して男はしっかりと顔を上げ、視線を合わせた。
 客人は若い女で、短い髪型がよく似合っている。頭の切れそうな顔ばせで、眼光は鋭く輝いていた。
 元々は倒した敵軍の将だったが、その手腕ぶりを高く買い、起用した。
 皮肉にも、今陣営内に残る唯一の将でもある。

「皆、離れて行く。お前は如何するのだ」

 入れたての珈琲を啜り、一言尋ねる。だが返答は無い。
 愚問だったか、と男は目尻に皺を寄せて苦笑した。

「私はまだ、最後にするつもりはありません。主上もでしょう? まだ……天命が尽きた訳では無いはずですもの」

 彼女はキッと暗い空を睨んだ。
 その先にあった物は、男には解らない。
 ただ、雨が、静かに降り始めていた。


―――――――――
希望としては、この後盛り返してくれれば良いなーなんて思ってます……が、果たして。
題名からすると、終わりっぽい……。



話題:SS
  
 09/04/30 09:12 SS・一.0

蒼き風 ―軍師・珂縹―

 眼前には鬱蒼とした森が広がっており、そのさらに先には碧い山が聳え立つ。
 森の手前で軍は停止した。

「……如何見る、粲惟(サンイ)」

 黒い馬に跨がった、壮年の男が呟く。
 すると、すぐ後ろに控えていた白馬に乗った若い男が一歩前へ進んだ。

「伏兵があるか、否かと言う事ですか」

 答えた粲惟は、跨がる馬の尻尾と同じように、長い黒髪を後ろの高い場所で結い上げてある。
 その口調はややぞんざいだが、男に対して接する態勢には敬意が伺えた。

「敵はこの森の中へ逃げ込んだ。我々を誘っているのは明白だ……が、どうやらこの先に奴らの砦があるらしい。そこまで引き上げたかどうか」

 男は言いながら顎髭を撫ぜた。
 言いたい事は、全軍を引き上げ、砦で篭城しているのか、それとも見通しの悪い森の中に伏兵を配しているのか如何かと言う事だ。

「篭城するのは確かでしょうが、伏兵があるのも確かでしょうね。森中での遊撃戦は兵数が少ない奴らには有効な手だ。それに奴らはこちらの兵数を減らしたいだけだから、戦闘には勝たなくても良い。反撃に出られそうになったら退けば良い。戦い難い相手ですよ」

 粲惟の言葉に、男は含み笑いを漏らす。
 その笑いは、次第に大きく谺した。

「は、は、は……腕の見せ所だな軍師殿。期待、しておるよ」

 言って男は馬の踵を返し、留めてある部隊へと戻って行く。
 その姿を見送り、一人、残された粲惟は森を見詰めながら思案を巡らせた。


「暫く、天の時を待ちましょう」

 粲惟は部隊に戻り、直ぐさま男の元へと向かうと、今の言を吐いた。

「待つ? 奴らの篭城が完璧になる時間をわざわざ差し出してしまうような物だぞ」

 男の表情は、驚いた様子の声とは裏腹に穏やかな物だった。
 粲惟の話をしっかり聞こうと言う体制がしっかり見てとれる。

「なるべくこちらの被害は出したくない。あちらさんは逃げ場もから篭城している訳ですが、こちらの数からして篭城で負ける訳が無いと思っている。なら、増援を頼んで、数を増やせばよい」

 真顔で奇策とも愚策とも取れる発言をする粲惟を前に、男は再び笑いを漏らす。

「増援? 何処の部隊に増援を頼むのだ。どの部隊も皆援軍など寄越さぬよ」

「都へ使者をたてます。しかも大々的に」

 粲惟は、敵に増援を請う為の使者を見せたいと言葉を続けた。
 増援が到着すれば、彼らに勝機など無くなる。そうなる前に、敵は包囲している軍を突破し、逃走を謀るであろう。
 そこを討つと言う事だ。
 もちろん、実際に増援は来る訳も無い。

「うむ……良かろう。好きにやれ、粲惟」

 男が言うと、粲惟は頭を下げてその場を後にした。

 まずは、使者を選び、書を認めた後、大掛かりな芝居を始めるとしようか。



――――――――
1000記事記念って事で(一つ前のが記事が千だけど)
先に、某所へ投下したが……まぁ、気にしない気にしない。

話題:SS
  
 09/04/03 19:48 SS・一.0

Geburah watch shop

 大きな城下街の裏通りを、烏濡れ羽色をした長い髪の女が靴音高く突き進む。
 人気の無い裏通りは暗く、石畳の所為かひんやりとしている。
 女は縹色のローブを着込み、いかにも魔女と言った風貌をしていて、右耳の紅い飾りが足を動かす毎に揺れ動く。
 魔女は、不図足を止めた。
 建物の影に隠れるように、小さな看板が立っているのを見逃さなかったようだ。

『ゲブラー時計店』

 魔女は、迷わずその店の扉を開いた。


 カランと小気味よい音をたて、扉に取り付けてある鐘が鳴る。
 店内は薄暗く、壁掛け時計がびっしりと並び、カチコチと時を刻む音で充満していた。
 カウンターに店主の姿は見えない。

「誰もいないの? 勝手に持って行かれるわよ」

 魔女が不満げに言うと、奥からのしのしと足音が響き、背が低く、横幅のある髭もじゃの男が顔を覗かせた。

「なんだ、あんたか……」

 溜息混じりにそう言うと、男はカウンターの椅子に腰掛けた。

「客に向かって、あんた呼ばわりか。そんな態度だから客が来ないのよ」

 魔女は壁掛け時計を眺めながら言う。

「なんとでも言え。客に媚び売ってまで買ってもらおうたぁ思ってねぇんでな」

 男のだみ声が、時計の音と重なる。
 魔女は瞳を閉じ、踵を返す。

「それで商売が成り立っているのは、一重に貴方の腕が良いからね。……また、頼まれてくれる?」

 言いながら魔女は懐に手を延ばす。
 取り出したのは、古い懐中時計だった。

「また止まったのか? おめぇさんの使い方が粗いんじゃねぇか……それに、その魔法ってので直せねぇのか?」

 男は時計を受け取り、大きな掌の上で転がし始める。

「時計はね、時間を操作する事になるから魔術では直せないの……お願いゲブラー、この子を直してあげて」

 珍しく魔女が神妙な面持ちを見せた。
 時計を『この子』と呼ぶ辺り、やはり普通の人間ではない。

「ははぁ。ま、良いさ。直すのが俺の仕事だかんなぁ……ただし、報酬は高いぜ?」

 ゲブラーは褐色の虎髭から白い歯を覗かせて微笑んだ。



――――――――――
ファンタジア王国さんの、リレー小説のキャラ設定用SS
ゲブラーの話し方とか、参考になれば良いのですが……。
話の設定はリレー小説とパラレルか、またはその後が調度良いのかなぁと思っています。
頑固だけど、人情に熱いと良いなぁ……。

  
 09/03/22 10:44 SS・一.0


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