3Z(沖神/甘々の恥ずかしい話)告白嫉妬甘い匂い。







いつも喧嘩してた。罵倒しあって、殴り合って。でも、嫌いじゃなかった。

気がついたら目で追ってた。風でなびく髪を、キラキラと反射する後ろ姿を。

ふと気づくと、目があった。すぐにそらして、そしてまた交わった。


誰もいない、薄暗い空き教室で。2人、今度は正面から目が合った。トキンッと胸が鳴った。
「お前のことが、」
「……」
「…好きでィ。」
「…私も、アル。」
「まじか。」
「まじアル……」
「まじかー…っ」
目をそらした彼は、照れくさそうに鼻をかいて、後ろで小さく拳を握った。
「じゃあ、さ。」
「ん。」
「付き合って下さい。」
「…ょ、喜んでっ。」
彼が声になってない声を上げて、両手で顔を覆って天を仰いだ。
「じ、じゃあ、私 職員室呼ばれてるネ、」
「ぇ、」
「だ、だから。
 …また、明日。」
「また、明日…」
「ぅん、じゃ、じゃネっ」
「ぉ、おう。またな」
「……ぅん。」
ぎこちなく手を挙げた彼を背に、ドアを開ける手が止まる。
「………行かねぇの?」
「…ぅん。」
「…今日、メールする。」
「…うんっ。また明日!」
「ぉぅっ。」






職員室から、誰もいない廊下をカバンを取りに早足で歩く。
(良かった。まだ外明るいネ)
通り過ぎた窓の外に、一瞬彼が見えたような気がして覗き込む。
(居た!ホントに居たアル!)
急いで行けば間に合うかな、そんなことを思って駆け出そうとした。その端でチラリと見えた見たこと無い彼の笑顔。
ツキンと胸が痛んだ。



その日、私はメールを返せなかった。




そのまま避けるようにして二日が過ぎた。胸がツキツキ痛んで、叫び出しそうだった。




「…あんだって…?」
「そのまんまの意味ョ。」
「おめぇ…ふざけんのもたいがいにしろィ」

あれからとうとう彼に捕まって、あの日のことを問いただされた。目がみれなくて、今にも泣きそうで、声を張って誤魔化した。

「ふざけてるのはそっちネ!」
「は?意味わかんねぇんだけど」
「…乙女心を弄んだ罰アル。」
「はっ。弄んでんのはどっちでィ。人がなけなしの勇気振り絞って告白したっつーのに…そらちぃと酷くねいかィ。」
「……乙女を騙す方が悪いアル。」

そう、騙されたんだ。私、騙されたんだ。

「俺が嘘ついたってーのかィ」
「…最低ネ。」

グッと拳を握った。爪が食い込んで、少し痛くて、もうどこが痛いんだか訳が分からない。
(爪、切んなきゃナ。)

「最低はそっちだろ。人の気持ち踏みにじりやがって」
「…こっちのセリフヨ。」
「…信じらんねーなら、もっかい言ってやらぁ。」

「ヤメロ。」

「チャイナが、好きでィ。」

「もう、やめるヨ。」

「嘘じゃねぇ。」

「…やめろって言ってるネ!!」

やっと目を見れた。キッと睨んだ目には、自分でも涙が張っているのが分かって、情けなかった。

「…チャイナ。」
「もう、いいョ…散れョ。」

「……っ、あーっ、そうかィ!…悪かったな。」

「……」

「でも、嘘じゃねぇ。」

「……」

「…っ、じゃあな。クソチビ」
彼は教室にあった机を蹴って、勢いよくドアを閉めて出て行ってしまった。


「……………酷いョ。なんでそんな嘘つけるネ。」

溜まってた涙が、ポツリと一滴落ちるのを、ボーっと見つめついた。










それから暫く、そのまま立ち尽くして、窓に映った真っ赤になった目を見た。

(あぁ、これじゃ帰れないョ。)

橙に暮れてきた空の色と、彼の蘇芳色の瞳を重ねて見た。
(バカネ。私、バカョ…)






………………………





―バンッ!
ドカッ「いって!ーっ!」

思わず目を見開いた。うっすら暗く橙に染まる窓越しに、息を切らしながら、さっき自分が蹴った机に躓く彼が見えた。


「ハァハァッ、っ、居た。おい!クソチャイナ!やっぱり、やっぱりもっかい、ちゃんと考えてくれねぇかっ。」
「…サ、ド」
「好きなんだ、お前のことが、…好きなんでィっ。」
「っ、」
「信じらんねーなら、信じてくれるまで、なんだってしてやらぁ!だから、」
「っ、…、っ」
「…て、おい、チャイナ?」「ふぇっ、」
「ど、どうしたんでィ?!」

止まらなかった。彼は慌てたように近寄ってあたしの顔を覗き込む。

「っ、っく、」
「お、おいぃ。どうした、な、なんで泣いてんでぃ」
「クソ、サドっ、…っなんで戻って来るネ!」
「……、…好きだか「うるさいうるさいうるさいうるさい!」」

もう溢れ出して、止まらなかった。

「私しってるネ!」
「っなにが、」
「喜んだ自分が、バカだったネ。」
「だからなんなんでィっ」
「………あの日、」
「あの日?」
「ぉ、お前が、スキって言った日」
「……」
「私見たネ、お前が、綺麗なおねぇさんと、楽しそうに歩いてるとこ…」

「…ぇ」

「笑ってたネ、見たこと無い顔で。お前、幸せそうだったアル…」

「あれはっ、」

「私…お前が好きアル。」
「じゃあっ」

「だから、つき合えないアル。」

「…なんでだよ」
「…辛かったョ、見たこと無いお前見て、あんなの見て、信じられるわけないネ」
「…、だから、」
「もういいョ。帰る。」
「待てって!」

全力で駆け出した。彼が倒した机を蹴り飛ばして、薄く橙に染まった廊下を、全力で蹴った。


「待てって……言ってんだっ、ろィ!!」


ハァハァと息を切らした彼の声が、耳元で聞こえた。体が温もりに包まれた。息が切れた、ぐるぐる目眩がする。ドキドキと重なる鼓動が聞こえた。

「っ、や、離すアル!」
「いやだ!」
「っ、なんで、っこんなコト、っ、するネっ、ぃっく」
「好きだからでィっ!」
「…っ、やめ、て ョ」


「おねぇちゃんでィ。」


「っ、ふぇ?」

「あの人は、俺のねぇちゃんなんでィ。」

「へ。」
(……おねぇ、ちゃん…?)


……あっ、と自分がしでかした間違いに、数秒遅れてボッと顔が火照った。



「あの日っ。おめぇに、告白するとき。…背中押してくれたんでさ。」
「…………」
「俺、まさかオッケイ貰えるなんて思ってなかったからよ、舞い上がっちまって…その、すぐ姉上に報告しに行ったんでィ。」
「……」
「だからっ、お前が見たのは、全部誤解なんでィ!」
「…、ぁ」

「…わかったか、コノヤロー…」

背中から伝わる温もりとは別に、内側からポカポカぬくぬく、温もりが上がっていった。

「…そんなに、喜んでくれてたアルか。」
「ぅっせ、当然だろ…。」

「ぷっ。…そんで、すぐにおねぇちゃんに 報告しに行ったアルか、っぷふっ」
「………そーでィっ。」

舞い上がって、くれたんだ。そんな素振り見えなかったのに。私があの教室から出てった後に、一人でこっそり喜んでる彼を想像して、可笑しくなった。
(私だけじゃ、無かったアル)


「ぷ、アハっ、お、おま、シスコンっ、あは」
「…っ。」
「が、ガキアルぅー!アハっ、ぷぷぷ」
「…っ、」
「なんでィ!お前だって事ある毎に銀ちゃん銀ちゃんって、うるせーじゃねぇか!」
「ナ!銀ちゃんは特別アル!」
「そーかィそーかィ」
「でも、お前はもっと特別ネ」
「……っ。」
「そこまで言うなら、今度おねぇちゃんに紹介されてやっても、いいアルヨ。」


「…まじか。」

「まじアル。」


少し黙って、彼は抱きしめたあたしの肩に顔をうずめて、ぐりぐりっとした。
(なんか…キュンとするアル…。)


「………っ、俺お前のこと、むちゃくちゃすきっ」
「…ヨシヨシ。泣くほど嬉しいアルか。」
「泣いてねぇ…、けど泣けるかも。」
「……。」

「神楽っ、」

「!っ、な、なにネっ
(な、名前呼ばれたネ!)」

「好き。もう死んじゃうんじゃないかってくらい…。神楽が好きでぃ。」

――締め付けられるように、きゅんとした。

「………。…そう、ご」

「!っ、」

そう言ったら彼は顔をバッと上げ、顔を真っ赤に染めた。きゅん。
(やっぱり、痛いアル…キュンキュンし過ぎて、痛いョ…)


トクントクンと脈を打ちながら、引き寄せられるように瞳が交わった。


「…神楽、」

「……、」

「……」

「……」

「……なぁ」

「なにネ」

「目つむれよ」
「イヤヨ。お前がつむるヨロシ」
「はぁ?お前がつむれよ」
「お前がつむれョ」
「いやお前だろ」
「いやいやお前だロ」
「いやいやいや」
「いやいやいやいや」
「……。」
「……。」

ひとしきり言い合う。そしたら急に黙って見つめられた。キラキラした、蘇芳色の瞳。
(…うっ。)

「……いっか。」
「ぇ。っん、」
「……」
「っ、んーっ!」

柔らかい物で口をふさがれたと思ったら、開けたままの瞳にじっと射抜かれた。

(も、むり、アル!)
ぎゅっ。

「つむった。(ニヤリ)」
「!っ、反則ネ!バカサド!」
「顔真っ赤だぜぃ。」
「うっさいネ!お前も真っ赤アル!おあいこョ!」
「まじか。」
「ふん、ざまぁないネ、ヘタレが。」
「なんだとぉ…、けっこー恥ずかしいんだぞぃ!でも、お前が目つむんねぇから、…………がまん、できなくなった。」
「なっ、」
「な、もっかいしてい?……今度はもうコレじゃ我慢できねぇかもだけど。」

ボッと火が上がる。

「っ!!ふ、フケツアルーっ!離れろョ変態!」
「男は狼何でぃ。あんま可愛いことすっと食っちまうぜ。」
「離すアルーっ!」



熱くて、溶けそうで、暴れて暴れて。ニヤニヤ笑ってたドSがふと止まったかと思うと、私を正面からきゅっと抱き込む。
フワッと良い香りがした。


「…神楽、好き。」



ドキドキが止まらなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


(後日職員室。)

―バタンッ!!!

「銀ちゃん!聞いてョ!」
「あんだぁー、神楽。ドア直せよー。」
「そんな事より、聞いてョ銀ちゃん!」
「そんな事って…」
「彼氏できたネ!」
「へー、あそー。あっ、クソ、ドアひび入ってらぁ。セロテープで直るかな、…………………あ゙?」
「彼氏できたアル。」
「はぁあああああ゙?!」
「紹介するネ、」
「ぇっ!?ちょっ、まって」
「彼氏の、」
「沖田総悟でさぁ。よろしくお願いしまさ、…銀ちゃん。」ニコ
「…。は、え?こいつがなんだって?」
「彼氏アル。」
「彼氏でさ。」
「はぁあああああ!?ちょっ、認めないぃぃいい、銀さん認めないからねぇえ!!お前に銀ちゃんなんて呼ばれる筋合いねぇんだよォオクソガキィイ!神楽ちゃんんんっ落ち着いてぇえ冷静になってぇえ!!」
「お前が落ち着けョ天パ」
「お父さん、落ち着いてくだせぇ。まだキスまでしかしてやせんから。」
「お父さんじゃねぇヨ。」
「キっ、!なにしてくれてんじゃぁぁぁああ!クソガキァア!お父さん認めないからねっ絶対認めないからねぇぇえ!」
「だからお父さんじゃねぇだロ。」


完。留学生神楽の保護者やってる銀八。

この後憤怒してる銀ちゃんを振り切って、またドアをぶっ飛ばして、銀ちゃんの怒声を背に2人でミツバねぇさんに報告に行きます。かわいいかわいい彼女を紹介に。



なんか長くなったうえに、とんでもなく恥ずかしい物が出来上がったなと自負しています←
学生おっかぐも好きだ。
なんか可愛いよな。


あ、今あたし恥ずかしいョ。助けて銀ちゃん。馬鹿なのはあたしの脳内。
何やってんだ自分ー。


おっかぐすきだー。




二次文