いつからか握り続けていたせいで、冷たいはずのその手はすっかり私の体温に馴染む程の温度になっていた。
――夢のあと、の、あと――
「失礼します。大佐、そろそろ戻って…あら」
いつまでも戻らない自分にいよいよ業を煮やしたか、呼びつけに来た副官は、しかし部屋の様子に気付くと声を潜めた。
「すまない、中尉。どうやら眠ってしまっているようでね」
目を覚ますと見慣れた金色がそこにあった。いつの間にかベッドにその小さな身体を潜り込ませ、眠ってしまっていたようだ。
ここは自分専用の仮眠室だし、このまま眠らせておいても不都合はないだろうと、仕事に戻ろうとした。
が、彼は私の手をしっかり握り締めていて。ああ、今日は残業だな、と頭の片隅で考えつつ、しかしその手を放そうとは微塵も思わなかった。
「今日はもう…帰りの日付が変わってしまうのはご覚悟を、」
「元より承知の上さ」
「いえ、ごゆっくり。それではお先に失礼します」
数日間の激務の後に突然舞い戻ってきていた恋人。夕日に照らされて、きらきらとその金髪を輝かせ眠る姿はまるで…
(こうしていると、まるで天使のようだな)
目を覚ますと、きっとまたいつものように悪態をつかれるのだろうけど。想像するに易い未来に、笑みが溢れた。
「おかえり、エドワード。とてもしあわせな夢を見ていたよ。それがまさか…目を覚ましたら現実になっているなんてね」
話題:二次創作文