同じ事を繰り返す日々が甘くてそして愛おしくて。そんな今日と明日がずっと続きますように。
――喧噪も 待ちぼうけの日々も 後ろ側でそっと見守っている 明日に変わる意味を――
「もう、行ってしまうのかい?」
ばたばたと身支度をするエドワードに、未だ乱れた着衣でソファに寝転んだまま声を掛けると、こちらを見る事も無く返事をされる。
「顔出しに来ただけのつもりだったしさ、アルも待って、うわっもう時間!汽車!」
「全く、だから挨拶ぐらい時間に余裕を持って来たまえよと、」
そう言うと弾かれたようにこちらを振り返ったその顔は真っ赤で。
「あんたが!その…し、しなけりゃ時間に余裕あっただろ!」
「出立を告げに来た恋人に指一本触れないで見送れる程、甲斐性無しではないよ私は」
「だ・か・ら!そういうのは想定してないっつーの!」
餞別替わりに殊更優しい微笑みを贈ると、立ち上がってその背にコートを掛けてやり、取り上げた左手にくちづけた。
「行っておいで、気を付けて。困った事があったらいつでも電話して、」
「うるさい!過保護すぎ!」
慌てて手を引くと、そのまま逃げるように部屋から走り去ってしまった恋人の幻影に、毎度の事ながらやれやれと軽く肩を持ち上げる。
旅立ってしまうのはわかっているのに、どうしても毎回手離すのが惜しくなって少しでも、と引き留めてしまう。
彼もそれをわかっているから、毎回少しずつ早い時間に顔を出して、本当にギリギリの時間まで自分の振る舞いを許してくれている。
「過保護ねぇ…お互い様、だろう?エドワード」
自分を過保護だと言った恋人の、眉の下がりきった顔を思い出すと、口許だけで笑って着衣を整える。
夜には次の街に着いて、そして…いつも旅立ちの翌日、速達で届く薄っぺらな手紙に想いを馳せる。
話題:二次創作文