紅茶一杯。



卵になった師匠と影山兄弟(続き)
2017年3月13日 18:57

話題:二次創作文

※モブサイコ100
※影山サンド失敗
※律がデレない…



「影山くん大丈夫?」
クラスの女子が心配して様子を窺ってくる。それに愛想良く返して、律は一人になれる場所を求めた。ポケットには卵の入った巾着。超能力はちゃんと分け与えている。
さっさとこの作業からおさらばしたいが、茂夫が部活に出る限り、霊幻が孵化しない限り、終わらない。
あれから律は極力卵との添い寝を回避するように頑張った。
合宿から帰った茂夫に卵と寝る際、変な夢は見ないか探りを入れると、師匠と会話が出来ると嬉しそうだった。茂夫にとっては良い夢のようだ。
何故自分は悪夢ばかりなのだろうと苦悩する。あの夢から2回、仕方なく卵と寝たが、ことごとく悪夢だった。
毎回霊幻がやたら懐くし律はそれを迎え入れるのだ。悪夢以外の何物でもなかった。
注ぐ超能力から嫌みでも伝わっているのだろうか。だから霊幻から仕返しを受けているんだろうか。律は一人、げっそりした顔で校舎の片隅で膝を抱えた。



「あら律。なにしてるの。」
冷蔵庫を開けて、卵を両手に持ち、それをすごい顔で凝視している律の後ろ姿に声をかける母親。
ビクリと肩を跳ねさせ、いそいそ卵を片方戻すと、もう片方をポケットに仕舞いそこから離れた。
「律!こら、その卵どうするつもり!?」
食べ物で遊ぶなんていけません、と叱ろうとした母親に
「これは元から冷蔵庫に入ってた物じゃないから平気だよ、母さん。」
と誤魔化しの笑顔を向けて、速やかに去った。
「拾ったっていうの…?」
と母親は困惑していた。



「兄さん!」
忙しなく律が茂夫の部屋に飛び込んできた。茂夫が迎えると律は興奮気味に
「霊幻さんがデカくなってる!!」
と訴えてきた。
「…うん?」
キョトンとする茂夫は理解出来ていない。律は深呼吸してから、卵を茂夫の前に出した。
「卵が成長してる。」
まるで事件だと言いたそうな律に
「うん。そうしないと霊幻師匠が孵化できないでしょ?」
と当たり前の事だよね?な顔の茂夫。
「えっ…」
「このサイズのままじゃ小さい師匠になっちゃうよ。」
と言われ、ああそうかなるほどな、と理解するが納得できない律。
「ちょっと待って。ということはこの卵もっと大きくなるよね?」
まるであの悪夢みたいなサイズに。と律は戦慄する。
「多分ね。あ、そうか。置き場所が…」
と漸く焦る茂夫。
「それだけじゃないよ。持ち運べなくなったら、どうやって暖めるの?力をどうやって注ぐの?このやり方は穴だらけだ。」
もっと早く気付くべきだったと律は後悔した。
「でもまだまだ手のひらサイズだし。練り直せばいいよ。」
と楽観的な茂夫。
しかし翌日の朝呼び出された律が茂夫の部屋に行くと、卵はダチョウの卵くらいに成長していた。青ざめる二人。顔を見合わせ、早急に考え直さないといけないと合意した。

学校を休むわけにはいかないが卵を持ってもいけない。二人が行き詰まっていると、巡回という名の散歩から帰ってきたエクボに遭遇した。面倒事から逃げようとするエクボを部屋に引っ張り込み、卵の解決策を一緒に考えるように頼んだ。渋々エクボも参加する。というか二人の荒み方が怖くて逃げられなかった。



「なんだ、だいぶ成長してきてんじゃねぇか。」
ダチョウの卵サイズから二周りくらい大きくなっている。
「さっきよりも成長してる……気持ち悪い。」
率直な感想を述べてしまう律。
「律、そんな事言っちゃダメだよ。師匠がかわいそうだよ。」
と子を守る親のように、卵を抱きしめる茂夫。すっかり母親気分だ。
「まぁこんくらいデカくなりゃ大丈夫だな。一日中、力を注がなくてもいい。暖めるのも四六時中じゃなくて大丈夫だ。」
「本当に?」
心配そうな茂夫。むくりとまた一回り大きくなる卵。それにビクッと体が引いてしまう律。
「律、そんなに怯えないであげて。師匠が傷付くよ。」
弟を叱る兄として、優しくもしっかりとした口調の茂夫に謝罪するも、律はチラチラ卵を見ては青ざめていた。
「とりあえず24時間の縛りはなくなったし、エクボお願いね。」
急に振られたエクボは
「えっ!!?」
と度肝を抜かれた。



なんで俺様がチマチマ集めた霊気をやらなきゃいけないんだと愚痴るエクボを宥めながら茂夫と律は学校に行った。
一人になったエクボは隣のずいぶんデカくなった卵を見る。
「霊幻。お前、孵化したらちゃんとアイツ等に礼しろよ。」
と言うと、小さく小さく、コツンと内側から音がした。
「!?」



律が帰宅するとエクボがやってきた。
「エクボお疲れさま。卵の様子はどう?」
「俺様のだけじゃ足りないから、律もメシやってくれ。俺様は霊気集めに行ってくるから抜けるぜ。」
とスイスイ飛んで行った。逃げたな…と思いつつ、茂夫にはチクらないでおくことにした律。
茂夫の部屋に行くと卵はだいぶデカくなり、成人男性一人は入れそうになっていた。
白い殻に手を添える。温もりを感じた。
「霊幻さん……そろそろ孵化しますよね。」
さらさらの殻を撫でる。律は複雑な表情をしていた。
「………インプリンティングとか、大丈夫ですよね……?」
恐る恐る口にする律。
「もしそんな事になるなら、絶対に立ち会いたくないので、兄さんが来るまで孵化我慢してくださいね。」
と告げると、律の手のひらが触れている場所からビキビキビキ!と亀裂が走った。ギョッとする律。
「ちょ…!駄目です止めてくださいッ!今言いましたよね!?」
と慌てて亀裂を押さえた。しかし殻はビシビシと亀裂を広げる。
「なんですか嫌がらせですか!?兄さん早く帰って来てっ!!!この人の母親になるなんて絶対に嫌だッッ!!!!」
魂の叫びをあげ茂夫に助けを求める律。
すると叫びが届いたのか、茂夫が帰って来たのが下から聞こえた。律は素早くドアに走り、茂夫を呼びに行った。
律からの報告に茂夫も慌てて部屋に行くと、卵はかなり亀裂が入り、内側から光が漏れていた。
「師匠……!!」
茂夫の後ろから様子を窺う律。インプリンティングの予防を張っている。
しかしあまりの光景に、つい卵の前に並ぶ二人。ビキビキ音を立て今にも孵化しそうな卵はしかし仲々割れず、手こずっている様子だった。
「師匠!頑張ってください!」
茂夫が一生懸命応援する。律は神々しさまで感じる卵の孵化に、ただ立ち尽くしている。
「律!律も応援して!」
「えっ!?」
はやく!と促され、弱々しく
「れ、霊幻さーん、あの、が、がんばれ〜…?」
と、しどろもどろに応援する。
「律もっと!」
と催促され、律もだんだん声を出す。なんだか異様な空間だったが、卵は遂に殻を弾き飛ばした。
「うわっ!?」
バァン!!とはぜる音と共に殻が飛び散る。爆風と衝撃に思わず尻もちをつく二人。顔を上げると、殻の残骸の中に立つ霊幻の姿。淡い光をまとい、一つ指を立て仁王立ちのドヤ顔だった。
(なんだその『天上天下唯我独尊!』とでも叫びそうな顔はーー!!)
と衝撃的な光景に腹が立ち突っ込みそうになったが、腰が抜けている律は言葉にならなかった。
「師匠!」
律より先に回復した茂夫は感極まったようで、立ち上がると霊幻に飛び付いた。
ガシッと茂夫を片腕で抱きとめると
「待たせたな…!」
と遅れて来たヒーローみたいなセリフを吐く霊幻。律のストレスゲージが無駄に上がった。
「兄さんその変態から離れて!!」
と叫びたかったが律は口をパクパクさせるだけだった。衝撃と精神的ストレスの合わせ技から律は回復できていなかった。
やたらイケメン顔を作っている霊幻はしかし全裸だったのだ。律が茂夫に離れろと忠告したいのも当たり前だった。



バスタオルを腰に巻いた霊幻は茂夫の勉強机の椅子に座っていた。散らばった殻を回収し、生まれたてなせいか汁まみれだった体は風呂を借りた。
さっぱりした霊幻は機嫌よく二人に礼を告げる。
今度ラーメン奢ってやると言われて喜んだのは茂夫のみだった。
「なんだ律、他のものがいいのか?チャーハン?」
と困惑する霊幻。律は目を合わせず、気まずそうにしている。
「ツケでいいです。それよりどうやって帰るんですか。」
タオル一枚だと確実に職質からのお巡りさんとカツ丼デートコースだ。
「それなんだが…」
霊幻は困り顔で首を掻いた。
「父さんの服を借りるしかないんじゃないかな。」
と茂夫。
「流石に直は申し訳ない。」
直?とキョトンとする茂夫に、察する律。
「兄さん、下着をまずどうにかしないと。」
「ああ、なるほど。」
理解する茂夫。



「師匠、タオルをこうして、こうすれば…」
「モブ、ありがたいが断る。俺にもプライドがあるんだ。」
茂夫のタオルを下着(というかオムツ)にする案を却下する霊幻。
全裸がなに言ってんだ、と突っ込みたいのを我慢する律。
「あ!そういえば!」
と茂夫が何かを思い出し、机の引き出しに向かった。
「師匠、これがありました!」
と手に掲げたのは褌。以前バレンタインに霊幻が悪ふざけで渡したものだった。
「あっ…うん…」
複雑な顔の霊幻に、なんで褌なんて持ってるんだと衝撃を受けている律。
かくして霊幻は褌に影山父の上下スウェットで帰った。居合わせなかったエクボは霊幻の褌姿を笑うチャンスを逃したと大変悔しがっていた。





・影山サンドを目指した結果がこのザマです。師匠が卵にいる間、事務所は休業看板下げてました。家賃は口座からなので大丈夫とかで。住処の方も。
1ヶ月以内の出来事って事で。


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モブサイコ100




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