――三日前
「お妙ちゃーん。もうずっと店に通ってんだー。いいだろぃ?少しくらいよぉ」
最低な客だった。店に通ったと言ってもあの日が初めて私を指名した日で、おまけにデブ。今まで見た事も無いような筋肉デブで、私の力でもまるで歯がたたなかった。お尻を触られて、手が出せないなら声を……でも、その声はデブが連れてきたバカみたいに騒ぐバカみたいな連れのせいで、私の声は誰にも届かない。
その時には近藤さんも長谷川さんも、銀さんもいたのに。ずっと私が助けを求めていたのに。
「随分と楽しそうな事……してんじゃねぇか。次ぁ、俺に代わってくんねぇか? 」
そう言って不意に現れた私を助けてくれた人は”危険”その物で、見れば、触れれば分かる。彼は危険。近藤さんのような変な危険じゃない。
人が避けて通る危険、そう、まるで黒ネコのような存在。
晋助さん。
「あの、ありがとうございます」
痛客を気迫で追い返してくれた晋助さんはそのまま追い返した客の席に座った。騒がしい客達のおかげで晋助さんの事あ誰も気がつかなくて、銀さんも長谷川さん達と派手に騒いでいた。
「銀時の女か? 」
「いくら助けてくれた方でも私は殺しますよ? ふざけた事おっしゃると」
「視線がアイツを追ってる」
出したお酒に一口も口をつけず、彼も銀さんを目で追っていた。楽しそうにお酒を仲間と飲む姿を。
「もしかして昔のヤンチャ仲間ですか? 」
「仲間……か。好きな響きじゃねぇなぁ」
取り出した煙管をくわえようとする彼は少し何かを思い出したように口を上に吊り上げた。その表情はどことなく銀さんがたまにする表情と似ていて、私は晋助さんに興味を持った。
次へ続きます。