ONE LIFE@の続きです。

…………………………

「髪、埃の匂いがする。ずっとここに?」
「うん、アルと。でも気付いたらアルがいなくて、それであんたがいて」
「仕事が一段落してね、少し休憩。今朝、君がここの鍵を借りに来たのを思い出したんだ」

(あ…きもちい…)

ゆるゆると、さらさらと、髪を滑る指の感触に、疲れた頭と体はとろり、と融かされ。
シャツの裾を握っていた指が緩んだのに気付くと、ロイはエドワードを抱き上げソファーに横たえた。

「眠いのだろう?少しおやすみ」
「ん…大佐は?」
「そうだね、さっきの本の続きでも読んでいるよ」

そう言って先程エドワードによって取り上げられ床に落とされたペーパーバックを拾い、立ち上がろうとする。
が、エドワードに袖を引かれ、立ち上がる事は儘ならなかった。再び屈み込んで頬を撫でる。

「どうした?」
「ね、大佐も一緒に寝てれば?」
「ここで?狭いだろう」
「じゃ、さ」

起き上がってソファーを半分空けると、そこにロイを招いた。

「ここ、座って」


ロイの太股の上に頭を乗せると、エドワードは満足そうに目を細めた。青い軍服の上に広がる金髪のコントラストが美しい。

「あー、こういうのってなんか、なんか…」
「鋼の?」

言い淀み瞳を曇らせたエドワードに、しかしその理由に気付いたロイは優しく前髪を撫でながら言った。

「君が幸せを感じる事を後ろめたく思うのは知っている。しかし、幸せは幸せとして素直に受け入れるべきではないか?」

その言葉に勢いよく起き上がると、混乱に色付いた泣きそうな目で真っ直ぐに見つめてくる。

「でも!アルは…あいつは眠る事さえできないのに、俺ばっかりこんな…」

言葉を詰まらせるエドワードを落ち着かせようと抱きしめ、首筋に顔を埋めると耳元で小さく続ける。

「あの子が感じられない分、君が感じた幸せをあの子に教えてあげられるだろう?それは君にしかできない事だ」
「でも…」
「そしてあの子が体を取り戻したその時には、君が感じてきた以上の幸せをあの子に感じさせなければならない。それも君にしかできない、そうだろう?」
「う…ん……」
「そのためには、まず君が幸せを幸せとして、理解しておかなければ、ね」

震える肩を抱き込み、背中をゆるく撫でる。暫くの間そうしていると、少し落ち着いたのか体を離して上目遣いに見上げてきた。

「なんか…ごめん、取り乱したりして」
「いや、いいんだ。本当に君はあの子の事が大切なんだな」
「当たり前だろ、たった1人の兄弟だ」
「それは…幸せだな、アルフォンスは」
「えっ」

不思議そうに見上げてくるエドワードに頬を擦り寄せ、耳朶に唇を寄せると呟いた。

「君に、こんなにも思われている。恋人の私以上にね」
「ほんと、あんたは、」

放たれた言葉はしかし終わりを結ばずに。耳まで赤くして俯いたエドワードの、その手はシャツの裾をきつく握り締めたまま。


話題:二次創作文